ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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カンブルラン指揮読響―第5回東京オペラシティプレミアムシーズ
1月8日午後6時半前、オペラシティへ。シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団による第5回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ。シューマンとラヴェルの作品が採り上げられた。

体調が優れず、仕事も立て込んでいたことから、振替えをするか迷ったが、午後になって足を運べる見込みとなったことから、チケットセンターに電話を入れ、急遽、2月の定期公演からの振替えで来場した。筆者に割り当てられた座席は、1階5列中央。前2列がステージの拡張により取り外されていたため、実質的には3列目に相当する。ステージまでの距離が近すぎるため、全体の響きを追いかけることができないが、サントリーホールなどの最前列に近い場所よりもまとまりは良く、生音の不快感は少なかった。

ところで、このシリーズでは、本プログラムの開演前に、室内楽の演奏が催される。ロジェ・ムラロと読響メンバーによる室内楽と称して演奏されたのは、シューマンの幻想小曲集と、バルトークの6つのルーマニア民族舞曲の二曲。

一曲目の幻想小曲集のクラリネットの独奏は、首席奏者の藤井洋子が務めた。シューマンらしい理想的なピアノ伴奏に乗り、柔らかく滑らかなサウンドでシューマンの歌曲を披露。音程が定まりきらない箇所も散見されたが、オープニングとして悪くない演奏であった。

続くバルトークは、昨年の定期公演でも演奏されており、今回はそのヴァイオリン独奏ヴァージョンである。なかなか気が利いた選曲ではあるが、シリーズが異なるので、その共通性に気付いた者は少数であろう。ダニエル・ゲーデの独奏は流石の貫禄であり、理知的な設計のもとで、身体から湧き上がる舞曲の拍子感とシャープな切れ味が冴え渡る。旋律にふくよかさが感じられるとより官能的な演奏になったようにも思われるが、フランス人のムラロとドイツ人のゲーデという異なるセンスの持ち主がそれぞれの感性をぶつけ合う刺激的な演奏となった。

さて、本プログラム前半は、シューマンの二作品。

一曲目の「マンフレッド」序曲は、なかなか聴き応えがあった。読響の特長である骨太なサウンドに、中低弦の重厚な力強さが加わり、スケールの大きな造形が打ち出されたこと、その骨格の中で、響きの色分けが明快かつ的確にコントロールされ、デジタルな鮮やかさにより浮かび上がったこと、また、明るく若々しいフレージングにスピード感があったことから、垢やホコリが洗い流された気持ちの良い音楽に仕上がった。今回のプログラムに関しては、この日が2日目にあたるが、初日の演奏終了後に聞かれたような不完全燃焼といった印象はなく、読響らしい前向きで熱のこもった演奏であったと思われる。

二曲目は、ロジェ・ムラロを独奏に迎え、シューマンのピアノ協奏曲。この日は、特にムラロの独奏に魅了された。クリアなタッチで、音の芯が明快であることに加え、発音と発音の隙間にまで音色が均質に詰まっており、フレージングの素晴らしさに非常に長けていた。シューマンらしい揺らぎも、完璧な計算を基礎としつつも、人の呼吸に適った自然体で表現されており、非の打ち所がない。カンブルランやコンサートマスターのゲーデとの相性もバッチリで、天才的な賢さの3名によるアンサンブルは、この作品の魅力を語るに十分なものであった。オーケストラに関しては、第一楽章冒頭から、木管楽器のハーモニーが定まらず、冷や冷やする箇所も少なくなかったが、ゲーデの醸し出す柔らかく繊細なフレージングに助けられ、流れよく進行。第三楽章では、スケールの大きい堂々たる演奏により、ムラロの独奏をサポートしていた。作品全体を通じ、筋の通ったブレのない演奏であったといえる。

ソリストによるアンコールは、バッハ(ムラロ編)の「Bist du bei mir」と、ラヴェルのソナチネから第二楽章の二曲。シューマンの余韻を活かしつつ、若干の華を添えるというアンコールの意義を踏まえた後味の良いデザートであった。

プログラム後半は、ラヴェルの二作品。

一曲目は「高雅で感傷的なワルツ」。バランスのよい演奏で、安心して聴けた点では、悪くなかった。ただ、生真面目すぎて、面白味に欠けるようにも感じられた。ラヴェルが描いたオーケストレーションの緻密さの片鱗を、頭で理解することは出来たが、各ポーションから滲み出るはずの色合いが開花する次元にまでは到達していなかった。その原因は、おそらくオーケストラ側にある。木管楽器を中心に音程のズレが響きを濁らせ、弦楽器のプルト間に温度差が生じていたことが裏目に出ていたようだ。特に、ファーストヴァイオリンは、コンサートマスターのゲーデと、それ以外の奏者との間には、ボウイングや音程の正確さにおいて、明らかな差があった。初日の演奏終了後の評判は良かっただけに、残念である。

二曲目は、スペイン狂詩曲。こちらの印象も、前の曲と大きな違いはない。解像度はある程度は高まったが、この作品のポテンシャルを十分に引き出すには、オーケストラの状態が万全ではなかった。カンブルランのタクトの情報量の多さ、とりわけ、響きの重心とニュアンスのコントロールの的確さを、ステージ間近の座席で観察できたという意味では、得るものは大きかったが、カンブルランのタクトやゲーデのリードから感じられる音楽が、必ずしも実際の音には結びついていなかった点には、もどかしさを覚えることも多かった。最終楽章の「祭り」では、高揚感はあったが、トータルでみると、ベストな状態であれば到達できたであろう圧倒的なレベルではなかった。聴く場所によっては、オペラシティの豊かな残響に助けられ、かなり違った印象になったのではないかと思われるが、間近で聴くと、どうしても粗が目立ってしまい、今ひとつ気分が乗り切らなかった。

アンコールは、ビゼーのカルメン前奏曲。カンブルランとゲーデのフレージングの巧さが光っていたが、それ以上に見るべき点はあまりなかった。スペイン繋がりの選曲といえるが、個人的には、あってもなくてもよかった。

週明けの定期公演では、カンブルランと読響が兼ね備えるポテンシャルが十分に発揮されることを期待。


(公演情報)

第5回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ
2014年1月 8日(水) 18:30開演

会場:東京オペラシティコンサートホール

指揮=シルヴァン・カンブルラン
ピアノ=ロジェ・ムラロ

【第1部】
ロジェ・ムラロと読響メンバーの室内楽
シューマン:幻想小曲集 作品73(クラリネット:藤井洋子)
バルトーク:ルーマニア民族舞曲(ヴァイオリン:ダニエル・ゲーデ)

【第2部】
シューマン:「マンフレッド」序曲
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
ラヴェル:スペイン狂詩曲
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[2014/01/11 20:20] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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