ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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イタリア行き(14年3月)③―ムーティ指揮ローマ歌劇場「マノン・レスコー」②
3月8日午前7時半、ホテルをチェックアウトし、ミラノ・ポルタ・ガリバルディ駅へ。Italo9915にてローマ・ティブルティーナ駅に戻る3時間20分の旅程である。復路もPRIMAを利用したが、往復で乗車すると、やや飽きが来てしまう。午後1時前に宿泊先であるベストウェスタン ホテル モンディアルに到着。こちらはクラシックな4つ星ホテルで、バスタブ等の設備は一通り揃っているものの、一昨日のホテルからは若干ランクが落ちるような印象であった。もっとも、ローマ歌劇場の隣という立地は文句ない。

ランチは、ホテルから徒歩10分ほどにあるシーフードレストラン、DA VINCENZOへ。日本語メニューを備えているが、必ずしも観光客向けというわけではなく、地元の人も多く来店して賑わっていた。ボンゴレ・スパゲティと白身魚のグリルは、どちらも水準以上の味わいではあった。

午後5時半すぎ、ローマ歌劇場へ。リッカルド・ムーティ指揮によるプッチーニ「マノン・レスコー」千秋楽。マノン役とレスコー役の2人が入れ替わった。

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筆者の確保した座席は、PAL.16 SX II OR A P6A 1列目。馬蹄3層目中央正面であり、全体の見晴らしがよく、思いのほか残響が華やかである。平土間に比べると、声がよく飛んでくるのは良いが、舞台最前方に限っては、声が極端に増幅されて聴こえくるため、やや不自然さを感じたことは否めない。また、打楽器の音が相対的に大きかったのも、ひとえに座席の位置に起因するものであろう。この劇場の場合、ボックス席に座るのであれば、サイドにずらした方が音響的には無難なようだ。

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さて、この日の上演では、マエストロ・ムーティの卓越した統率力が如何なく発揮された。千秋楽を飾るにふさわしいものであったといえる。

階上席から眺めていると、マエストロのタクトや表情から窺える情報量の多さに改めて驚かされる。リハーサルにおける徹底した仕込みに加え、一寸の狂いもない必要十分な完璧なアウフタクト。歌劇場全体がマエストロの楽器と化しているといっても過言ではない。また、この日は、キャスト2名が入れ替わった反動で、タイミングが狂いそうになる箇所も散見されたが、ものすごいオーラとともにこれを瞬時に立て直す修正能力の高さは、圧巻である。しかも、そうした崩れを逆手にとり、舞台の緊張感を高める方向に導く神業的な推進力は、他の指揮者にはないマエストロの凄さかもしれない。

一昨日と異なり、第一幕では、マチネ公演らしい活力に漲っていた。一昨日の印象と異なり、合唱が存在感を持って聴こえてきたのが興味深かった。躍動感が上がったことで、ややスリリングな演奏となる箇所もあったが、幕切れまで概ね順調に進行した。

第二幕前半は、一昨日と同様の落ち着きを取り戻し、穏やかな表情で音楽が進行。マノンのアリアは、この日マノン役を演じたセレーナ・ファルノッキアの歌唱に、大きな破綻はなかったが、細部にわずかなムラが垣間見られ、ネトレプコの圧倒的な名歌唱を聴いた後では、どうしても物足りなさが残る。逆に言えば、ネトレプコが凄すぎたということではあるが。

第二幕後半のマノンとデ・グリューによる二重唱も、残念ながら音楽的な覚醒の境地にまでは至れなかった。マノン役のファルノッキアも、デ・グリュー役のユージフ・エイヴァゾフも、瞬発力はあり、決め所はしっかりとおさえてくるが、それ以外の台詞的なパッセージで声が沈んでしまうため、音楽的な緊張感が持続しない。スコアにおいてクレッシェンドの指示があり、管弦楽的にはもう少し盛り上がりたいところでも、歌とのバランスを保つため、ボリュームを抑え込まざるを得ず、一昨日と比べると、もどかしさの残る演奏になっていた。通常であれば、後味が悪いままに終わってしまうところだが、マエストロの凄さはここからであった。ギリギリまでピアニッシモのままぐっとこらえつつ、クライマックス直前でスッと手綱を緩め、オーケストラにスイッチを入れた結果、管弦楽と歌とのバランスを最上の状態に保ちつつも、クライマックスらしい高揚感を当たり前のように演出。この選球眼の鋭さには、鳥肌が立つほどの感銘を受けた。

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間奏曲は、座席による印象の違いはあるにせよ、一昨日よりもやや解放感のある演奏。今から振り返ると、この日は、第三幕と第四幕が一昨日よりも速めのテンポで進行することが予定されていたため、間奏曲のテンポ感もそれに合わせていたものと推察される。こういうセンスは、オペラ指揮者らしい。

第三幕は、第二幕と同様、前半におけるマノンとデ・グリューの二重唱がいま一歩であったものの、一昨日と同様に、後半に向け、声の積み重ねによる壮大なクライマックスが構築された。デ・グリューの瞬発力は、特に後半において功を奏し、悲劇性を印象付けることに成功していた。なお、マエストロのタクトに関して、新たな発見は二点。一点目は、音楽的な高揚感の演出にあたり、オーケストラの内声部の響きを充填することで、ピット内から湧き上がるような盛り上がりを導き出す手法である。声と衝突しないため、歌手が掻き消される事態は避けられる。二点目は、後半のクライマックス後の落ち着かせ方で、大見得を切るような締め括り方を回避することで、舞台の進行に連続性をもたらすという手法である。次の場面を見越して、頂点に到達した直後にギアをローに入れ直すことで、舞台上の空気は、着実に次の場面へと向かってゆく。いずれの場合も、必要十分な効果を導くバランス感覚が問われることとなり、しかも、さりげなさを失わないための加減が極めて難しいことは言うまでもない。

第四幕は、前向きなテンポで無難にまとめ上げられていた。この日演じたマノンとデ・グリューの状態に鑑みると、秀逸な判断である。展開がスピーディーで、流れは良いが、最弱音のニュアンスは弱く、一昨日にネトレプコが描いた孤高の世界には及ばない。無いものねだりといえるかもしれないが。

なお、度胆を抜かされたのは、第四幕のコーダ8小節である。第四幕全般を通じて、最弱音の繊細さを描き出すことが出来なかったことを踏まえたのか、幕切れの管弦楽によるコーダのクレッシェンドの頂点を、あえてmf程度に抑え込んだ。これにより、やや健康的な印象であった第四幕全体の色合いが、淡色系のポートレートへと急に変化し、絶望的な荒野の中での喪失感を印象付けた。完全に心を射抜かれた瞬間であった。

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カーテンコールでは、マエストロが万雷の拍手で迎えられ、有終の美を飾った。

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終演後は、ホテルに直帰し、ビールとともに就寝。翌朝は午前4時半にチェックアウトし、タクシーでローマ・フィウミチーノ空港へ。チェックアウト時、ホテルのフロントで請求額を巡り、警察沙汰になって大騒ぎしている集団がいたため、手続に手間取り、危うく飛行機に乗り遅れるところであった。駐車場を利用したかどうかで、早朝から大騒ぎしないでほしい。LH243便にてフランクフルトへ。そしてNH204便にて羽田へ。帰路は無事にビジネスクラスにアップグレードされた。午前7時前に帰国し、自宅にタッチアンドゴーして、職場へ急ぐ。


(公演情報)

MANON LESCAUT

Teatro Costanzi
Musica di Giacomo Puccini

Sabato 8 marzo, ore 18.00

Direttore: Riccardo Muti
Regia: Chiara Muti
Maestro del Coro: Roberto Gabbiani
ORCHESTRA E CORO DEL TEATRO DELL’OPERA
Nuovo allestimento

Interpreti
Manon: Serena Farnocchia
Des Grieux: Yusif Eyvazov
Lescaut: Francesco Landolfi
Geronte: Carlo Lepore
Edmondo: Alessandro Liberatore
Oste: Stefano Meo
Maestro di ballo: Andrea Giovannini
Un Musico: Roxana Constantinescu
Sergente: Gianfranco Montresor
Lampionaio: Giorgio Trucco
Comandante: Paolo Battaglia
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[2014/03/16 15:27] | 海外視聴記(ローマ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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