ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ルツェルン・チューリッヒ行き(11年9月)②―バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン―Boulez&Wagner
9月18日午前10時すぎ、カルチャー&コングレスセンター(KKL)へ。この日は、ルツェルン音楽祭2011夏の最終日。バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ベルリン)による演奏会だ。ブーレーズ「ノタシオン」と、ワーグナー「ワルキューレ」(第一幕)が採り上げられた。

この日の座席は、3.Galerie linksの中央付近。平土間でいうと、前から12列目くらいの位置だ。昨日と異なり、舞台上の音がよくブレンドされ、心地よい残響を伴う。しかし、先月座ったBalkon正面席とは異なり、過度の残響によって音像の焦点がぼけることもなく、音の分離はクリアだ。また、4.Galerieのように、舞台上の反響板に遮られることもない。過去4回の中では、音のバランスの最も良い座席であった。

プログラムの前半は、ブーレーズ「ノタシオン」。原曲は、1945年に作曲されたピアノ独奏のための「12のノタシオン」で、このうちの数曲が1978年、1984年、1998年に、管弦楽版としてリメイクされている。管弦楽版におけるオーケストラは超巨大編成で、舞台上を埋め尽くす様を見るだけでも圧巻である。

今回は、「Ⅰ‐Ⅲ‐Ⅳ‐Ⅶ‐Ⅱ」の順序で演奏された。しかも、曲ごとに、最初に、バレンボイムがピアノで原曲を演奏し、その直後に、バレンボイムが指揮台に立って管弦楽版を演奏する、という凝った趣向の構成。こういう芸当ができるのは、バレンボイムだけだろう。

こうして原曲と管弦楽版を並べて聴いてみると、色々と発見があって面白い。原曲はいたってシンプルだが、これが管弦楽版になると、前衛的な現代音楽に化ける。しかし、核となる部分は、原曲と共通しており、妙に惹き込まれる。音楽の持つパワーと緊張感が並外れているのだ。この分野に関しては、筆者は無知に等しいが、ブーレーズのこの作品は、傑作といわれるだけあって、巷に氾濫する複雑怪奇な現代音楽の数々とは、一線を画していることがよく分かる。

シュターツカペレ・ベルリンも、緻密かつ精巧なアンサンブルで、文字通り巨大なスコアに描かれている音像を的確に浮かび上がらせていた。バレンボイムのバランス感覚にも驚かされた。

20110918-01

そして後半は、ワーグナー「ワルキューレ」第一幕。オーケストラに脱帽である。管弦楽曲を演奏していたときとは、響きがガラリと変わった。

全ての響きが結晶化しており、和声進行は完全にはまっている。旋律は歌心に溢れ、ドイツの歌劇場らしい重心の低いフォルテも感じられる。ピアニシモの響きの純度も高く、トネリコの木に刺された剣をジークムントが引き抜く場面など、色彩感も十分。とりわけ、フンディングの動機等におけるホルンセクションの完成度の高さは、特筆に値する。管弦楽という観点から、文句のつけようがない。

さらに驚くべきは、歌を邪魔することが一切なかったことだ。ウィーンなどでは、オーケストラが出すぎることも珍しくない。もちろん、シュターツカペレ・ベルリンも、オーケストラが主役を張るべきところでは、前面に登場する。しかし、歌が始まると、声が浮かび上がるように、全体のバランスが絶妙にコントロールされているのだ。響き自体は、どちらかというと地味な印象ともいえるが、ワーグナーの音楽を純粋に味わうことを考えると、実はこれくらいの按配が丁度良い。例えていうなら、キチンと仕事がなされた和食といった感じだろうか。

バレンボイムのスコアの読みの深さも卓越している。正面からの真っ向勝負で、隙がない。様々な動機が有機的に結びつき、大きな流れが生み出される。他の指揮者との格の違いは、明白であった。現代最高のワーグナー指揮者の称号に偽りはない。

歌手に関しては、ジークムント役のペーター・ザイフェルトは、楽譜に目を落とす時間が長すぎ、バレンボイムの設定したテンポ感に乗ってこない。タイミングが常に後よりで、音楽の流れを阻害していた。バレンボイムは、先振りのアウフタクトを何度も出して、ザイフェルトを引きつけようとするも、効果なし。リリックで聴きやすい声だが、流れが悪く、また表情にあまり変化もないので、だんだん飽きが出てきた。ハイトーンでは、相当気合いが入っていたようだが、他の部分がいまいちなので、それだけの印象に終わってしまった。

フンディング役のクワンチョル・ヨンは、安定感のある歌唱ではあったが、役柄に見合ったオーラは感じられず、こちらもいま一歩。

総じて良かったのは、ジークリンデ役のニーナ・シュテンメ。目立つわけではないが、一歩退いたポジションから、諭すような歌唱で、役柄に見合った懐の深い表現が聴けた。音楽的な安定感も文句なし。

20110918-02

終演は午後1時すぎ。ルツェルン中央駅から国鉄でチューリッヒに向かう。


(公演情報)

Sinfoniekonzert 34
So. 18. September 2011 | 11.00 | KKL Luzern, Konzertsaal

Staatskapelle Berlin
Daniel Barenboim Dirigent
Nina Stemme Sieglinde
Peter Seiffert Siegmund
Kwangchul Youn Hunding

Pierre Boulez (*1925)
Notations I-IV und VII
Fassungen für Klavier und für Orchester

Richard Wagner (1813-1883)
Die Walküre, Erster Akt
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[2011/09/20 03:05] | 海外視聴記(ルツェルン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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