ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
リヨン行き(11年10月)②―大野指揮リヨン国立歌劇場「鼻」
10月16日、前日に引き続き、リヨン市内は穏やかな晴天に恵まれていた。昼すぎにホテルを出て、Place Bellecourに面したL'ESPACE BRASSERIEへ。ここは、今回の旅程中に入ったレストランの中で、唯一当たりといえるブラッセリーであった。店内は、地元の人々で溢れていて、活気がある。鴨胸肉の燻製、砂肝のコンフィ、フォアグラを添えたサラダと、リヨン風ソーセージをいただいたが、どちらも素材の旨みが活かされた仕上がりで、ブラッセリーらしい食事を楽しむことができた。

ランチの後、徒歩でオペラ座へ向かう。この日の演目は、ショスタコーヴィチ「鼻」。今シーズンのプレミエで、今年7月のエクサン・プロヴァンス音楽祭でも上演された話題の演目である。早い時期から完売状態であり、開場前のチケット売り場は当日券を求める人で溢れていた。

20111015-01

筆者に割り当てられた座席は、4EME BALCONの上手側サイド。オーケストラピットの真横の座席だったが、幸いにも舞台が見切れることはなかった。マエストロと舞台上との間のやり取りを眼前に把握することができ、筆者にとっては絶好のポジションである。

20111015-03

20111015-02

さて、上演の方だが、この作品については、筆者自身の勉強不足ゆえ、台本や楽譜に照らしてコメントできる立場にはない。しかし、筆者の中に激震が走ったことは確かだ。

実のところ、終演直後は、凄い上演だったな、という程度の感覚であった。しかし、一夜明けてみると、この日の上演において、筆者自身がとてつもないエネルギーの塊を受け止めていたことに気付かされた。夜は、普通によく眠ることができ、睡眠不足の感はないが、一晩中、不思議な夢の数々に襲われ、何度か目が覚めた。原因は不明だが、他に思い当たるところはなく、この日の上演が筆者の中に何かを呼び起こしたのではないかと推察される。

演奏面は、98%の完成度。驚異的なほどの水準の高さだ。この作品は、楽器編成は巨大だが、多種多様な楽器の組合せによる室内楽が全曲の大半を占める。一見すると軽やかにも感じられるが、その響きは、斬新で前衛的。オーケストラの個々のパート、そして歌手のアンサンブルは、アクロバティックなフレーズの連続で、それらがスコア上で極めて複雑に入り組んでいる。この極めて複雑怪奇な作品を、ライブで、ここまで高いクオリティで演奏するのは、並大抵のことではない。磨き抜かれた個々の響きは、完全に結晶化していたし、精緻に構築されたアンサンブルは、実に見事。とりわけ第三幕後半の盛り上がりは、神がかり的と言っても過言ではないほどであった。

そして、歌手も合唱もオーケストラも、気合いが入っていることは、手に取るようにわかった。しかし、なぜか舞台上に熱が帯びてこない。どこまでもクール。これは、「鼻」という作品のシニカルさによるものだろうか。

演出も、センスのよい構成で、随所に目を惹く仕掛けがあった。第二幕の新聞社の場面で、動きが少なく、若干退屈に感じられた以外は、演技面でもテンポ感があり、流れがよい。ショスタコーヴィチの雰囲気と世界観を明快に示していたのではなかろうか。もっとも、最後の場面、すなわち鼻が元に戻る場面で、鼻がピストルで撃たれて粉々になるという影絵が映し出されていたが、この作品では、鼻という人格は死んだわけではないようにも思われ、違和感があった。

20111015-04

終演後、楽屋口でマエストロとお会いした。ぐったりとお疲れのご様子。取り扱っている作品の重さ、全身全霊で上演に立ち向かう指揮姿、連日の過密スケジュールに鑑みれば、むしろ当然だろう。長時間引き止めるのも申し訳ないので、筆者の感動を簡潔にお伝えして、会場を後にした。

夕食は、前回も訪れた有名店、ブラッセリー・ル・ノールで。セットメニューで、テリーヌと子牛の肩肉のグリルを選択したが、印象の良かった前回と異なり、全般的に素材のクオリティが落ちた感じで、いまいちであった。値段相応といえばそれまでかもしれない。この日の印象だけからは判断しかねるが、仮に、ポール・ボキューズ系列もコスト削減と低価格路線を歩み始めているとすれば、非常に残念だ。午後10時頃、ホテルに戻り、就寝。

20111015-05

翌日は、午前4時半に起床し、午前5時にホテルを出て、空港へ。そして、午前7時5分発のSN3594便にて、どんより曇り空のブリュッセルへ戻り、職場へ直行。いつもながら、ブリュッセル航空のサービスレベルの低さには閉口させられるが、他に選択肢がないので、やむを得ない。この国においては、競争原理がもう少し機能した方がいいように思う。

今回の旅程は、週末のみであったが、非常に多くのことを学ぶとともに、たくさんの刺激を受けることもできた。世界の第一線に立つということの意義を実感できた気がした。身が引き締まる想いで、ブリュッセルに戻った。


(公演情報)

Le Nez
Dimitri Chostakovitch
Dimanche 16 Octobre 2011 à 16h

Direction musicale : Kazushi Ono
Mise en scène et vidéo : William Kentridge

Vladimir Samsonov : Kovaliov
Alexandre Kravets : Le Nez - Yarychkine
Andrey Popov : Le Sergent de quartier
Vladimir Ognovenko : Ivan Yakovlevitch - Khozrev-Mirza
Claudia Waite : Praskovia Ossipovna - Une marchande - Une dame respectable
Vasily Efimov : Ivan, Le premier fils - Un premier nouveau venu
Yuri Kissin : L'Employé du bureau de la presse - Le second fils - Un opportuniste - Quelqu'un
Gennady Bezzubenkov : Un docteur - Domestique 8 - Un père - Un second nouveau venu
Margarita Nekrasova : Pélaguéia Grigorievna Podtotchina
Tehmine Yeghiazaryan : La fille de Madame Podtotchina - Une mère

Orchestre et Chœurs de l'Opéra de Lyon
スポンサーサイト
[2011/10/18 07:23] | 海外視聴記(リヨン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<ペンデレツキ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア | ホーム | リヨン行き(11年10月)①―大野指揮リヨン国立歌劇場管弦楽団>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/63-d87f4304
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。