ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ペンデレツキ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア
10月18日午後7時半頃、パレ・デ・ボザールへ。今週に入ってから、ブラッセル市内は一段と冷え込んできた。日中は気温が15℃に至らず、朝晩は5℃前後まで冷え込む。この日は、ワルシャワに本拠を置くオーケストラ、シンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏会。ポーランド楽派の巨匠クシシュトフ・ペンデレツキが指揮台に立った。

この日の座席は、Balcon 2の中央下手側。管打楽器の音は、背後に迫る壁伝いに回ってくるため、若干の違和感は残るものの、そこそこクリアで、マイルドな響きになって聞こえてくる。他方、弦楽器に関しては、ガラス越しに鑑賞しているかのようであり、弦楽器特有の音圧や艶といったものは、一切感じられない。それゆえ、NHKホールの3階席とまでは言わないが、2階席の後方で聞いているかのような遠さを感じた。もっとも、この座席は、第4カテゴリーという最安価な価格帯ゆえ、贅沢は言えない。

20111018-01

プログラムの前半は、ペンデレツキのヴァイオリン協奏曲第2番「メタモルフォーゼン」。1992年から1995年にかけて作曲された作品だが、旋律もクリアで、調性感もあり、現代作品にしては、かなり聴き易い部類に入るだろう。

ペンデレツキが12年以上にわたり音楽監督を務めている団体だけあって、シンフォニア・ヴァルソヴィアは、ペンデレツキの音楽を熟知している。響きの方向性が揃っており、音楽の流れが自然だ。骨太な確固たる造形の下、陰影に富んだ響きが全体を支配し、ペンデレツキの深遠な世界観が明快に浮かび上がっていたといえる。ペンデレツキの音楽に初めて共感を覚えることができた。

ジュリアン・ラクリンによる独奏は、粘着系の表現を適度に織り込みつつも、音楽の流れに逆らわないストレートな演奏スタイル。それゆえ、この日の演奏では、コンチェルトというよりも、独奏ヴァイオリンを伴った交響曲というイメージの方が強く打ち出されており、結果として、全体の一貫性に結び付いていたように思われる。
良い座席で聴いていれば、もう少し細かいニュアンスまで追いかけられたはずだが、筆者の座席では全てが平板に聞こえたため、ラクリンの独奏については、これ以上のコメントが出来ない。見た目の印象からすると、なかなかの力演であったと思われることから、残念だ。

20111018-02

プログラムの後半は、ベートーヴェンの交響曲第7番。この日は空席が多かったことから、後半は平土間のP列に移動して鑑賞した。

この場所は、サントリーホールで言えば、1階席の中央を横に貫く通路のすぐ後ろくらいの場所に相当し、床に若干の傾斜も付いていることから、パレ・デ・ボザールの中では、最も環境の良い座席の一つと思われる。実際、適度な音圧を伴った弦楽器の音色と、まっすぐ飛んでくる管楽器の音色が、バランスよくブレンドされて聞こえてきた。それゆえ、臨場感や開放感という意味では、前半に座った座席とは、天と地ほどの差があった。
しかし、それでも、実際に聞こえてきた響きには、なお不満が残った。というのも、弦楽器の後方プルトの響きが飛んでこないことに加え、舞台の中央に位置する弦楽器群(この日の場合は、2ndヴァイオリンとヴィオラ)の音が舞台上で吹き溜まりのように滞留し、オーケストラの響きが一つにまとまらないのみならず、混濁して聞こえるのだ。ダイナミクスのレンジが非常に狭い(つまり、フォルテで鳴らず、弱音で響きすぎる)ことも問題。ホールの音響に難があることは明らかだ。

さて、演奏の方だが、シンフォニア・ヴァルソヴィアは、室内オーケストラの系統に近いアンサンブルの組み立て方を基調としており、それゆえ、縦の線は、自然体でありながらも、ビシッと揃っていた。ペンデレツキの指揮は、バトンテクニックという観点からは素人レベルであるため、自然に鍛えられたのだろう。
2ndヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスの各首席のポジションには、職人肌の超ベテラン奏者が座っており、舞台中央に一直線に並んだこの3名が絶えずアンサンブルをリードしていたのが印象的。彼らは、実によい仕事をしていた。コンサートマスターよりも2ndヴァイオリンの首席奏者の方が存在感があり、2ndヴァイオリンの首席奏者が事実上のコンサートマスターのような役回りを果たしていたようにも感じられた。これは決して悪いことではなく、内声部を受け持つセクションを基軸としてアンサンブルを組み立てるという手法は、オーケストラの安定性を高めるとともに、響きの充実を帰結するという意味で、一つのあり得る選択肢かもしれない。

また、個々のフレーズの語尾を柔らかく上品に収める手法が徹底されており、フレーズの処理に関しては、入念なリハーサルが繰り返されたことが窺われた。
とりわけ、第二楽章では、やや速めのテンポ設定の下、四分音符単位ではなく小節単位で拍を捉えたことから、活き活きとしたフレーズ感が生み出されていた。楷書体でキリリと仕上げた前半部分は、特に聴き応えがあった。なお、快速テンポで一気に運んだ第四楽章も、よくコントロールされていたが、この点に関しては、金管楽器の音色が宮廷の楽隊による演奏のような軽い響きになってしまうなど、いわゆるベートーヴェン的なイメージに照らすと、違和感はあった。いずれにせよ、弦楽器の内声部の充実に助けられ、表現の幅に広がりがあったことは確かだ。

しかし、和音や響きに関しては、ブレや滲みが多く、在京オーケストラによくみられるような、中途半端な仕上がりであったことは否定できない。ベートーヴェンの交響曲第7番は、とりわけシンプルな構成であるため、粗が目立ってしまうのだ。もっとも、これは、オーケストラの問題というよりも、個々の奏者の技術水準の問題ともいえる。

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なお、アンコールは、弦楽合奏によるペンデレツキのシャコンヌ。これは、内声が活躍するので、結構楽しめた。

ともあれ、感動や驚きはなかったが、色々と参考になる点はあり、筆者個人にとっては、わざわざ足を運ぶ価値のある演奏会であった。


(公演情報)

Tuesday 18.10.2011 20:00
Centre for Fine Arts / Henry Le Boeuf Hall

Krzysztof Penderecki conductor
Julian Rachlin violin
Sinfonia Varsovia

Krzysztof Penderecki, Concerto for violin and orchestra no. 2, "Metamorphosen"
Ludwig van Beethoven, Symphony no. 7, op. 92
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[2011/10/20 03:57] | 海外視聴記(ブリュッセル) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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