ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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タバシュニク指揮ブリュッセルフィルハーモニック―ベルリオーズとブラームス他
11月13日午後2時半すぎ、パレ・デ・ボザールへ。三連休最終日の街中は、ガイドブックを片手に歩く観光客の姿が目立つ。

この日は、ミシェル・タバシュニク指揮ブリュッセルフィルハーモニック(旧Vlaams Radio Orkest)による演奏会。筆者が先週末に出演したブリュッセルフィルハーモニックオーケストラと名前が似ているが、両者は全く別の団体である。

筆者に割り当てられた座席は、平土間中央6列目。この日は、Balcon 2のみならず、Balcon 1も閉鎖されており、平土間席のみが開放されていた。客席は8割弱の入りだったので、来場者数は600名程度であろうか。興業的な観点からは、かなり厳しい数字といえる。ともあれ、階上席が全て空席であったお陰で、ホール内の響きが増し、結果的に、非常に良い音響バランスの下で演奏を楽しむことができた。

20111113-01

プログラム前半の一曲目は、ブーレーズ「弦楽のための本」。

意欲的な選曲ではあったが、演奏の方は、楽譜をなぞるので精一杯な感じで、音楽的な完成度はかなり低かった。この作品では、細かな音符の交錯がもたらす鮮烈かつ多彩な響きが魅力の一つとなるはずだが、そういった瞬間は一度も感じられなかった。企画倒れの感は否めない。

二曲目は、ベルリオーズの歌曲集「夏の夜」。フランスのソプラノ歌手ヴェロニク・ジャンスが独唱を務めた。

この作品は、「ヴィネラル」「ばらの精」「入江のほとり:哀歌」「君なくて」「墓場にて:月の光」「未知の島」という6つの歌曲から構成される。「夏の夜」の雰囲気を基調とするが、淡かったり、ほの暗かったり、また、明るかったり、快活であったりと、曲によって色合いが変わってくるのが面白い。

さて、演奏の方だが、こちらは、一曲目とは打って変わって超名演であった。

何といっても、ジャンスの存在が大きかった。彼女の落ち着きと深みのある歌唱は、非常に格調が高く、安心して心を委ねることができる。陰影に富んだ表現と適度な情感がその歌唱の説得力をさらに高めていた。とりわけ、ベルリオーズの管弦楽を纏ったフランス語の美しさには、感銘を受けた。

オーケストラも、ベルリオーズが遺した優しい響きの数々を見事に描き出し、好サポート。軽さと優しさの同居した繊細なタッチは、この作品にはベストマッチである。そよそよさわさわと流れ続ける伴奏型のさりげない美しさも絶品であった。また、フォルテのトゥッティにおけるフランス的なマイルドな響かせ方も見事。ある意味、フランスのオーケストラ以上にフランス的なサウンドであったといえるかもしれない。

思いもかけず、よい音楽を聴くことができ、この日の満足度がだいぶ上がった。

20111113-02

プログラム後半は、ブラームスの交響曲第4番。ベルギー国立管弦楽団によるブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏がいまいちであったため、不安であったが、総じて良い演奏ではあった。後期のブラームス作品の場合は、フランス的なアプローチも、お洒落で良いかもしれない。

第一楽章冒頭の淡く繊細な響きは、他ではなかなか聴くことができない美しさ。楽章全体を貫く波を打つような八分音符の動きは、ベルリオーズのときと同様、実に自然で、優しいタッチ。滞ることのない澄み切った流れを生み出していた。音楽のスケールも大きい。旋律の呼吸は深く、雄叫びのような乱雑な響きが聞こえてこないのにも、好感が持てた。あれこれとこねくり回すこともなく、かといって、インテンポに縛り付けるわけでもない。じわじわと滲み出てくるようなブラームスは、独特ではあるが、なぜか心にスッと入ってきた。残念だったのは、終結部に向かう箇所で急にテンポを引き締め、よくありがちな演奏スタイルにシフトしてしまったこと。響きの重心が後ろよりのオーケストラの場合、唐突にテンポを引き締めると、レスポンスに時間を要する中低音楽器の鳴りが相対的に遅れ、結果として、高音部のみが先に飛び出して聞こえてしまう。今回もまさにそういう状況が生じた。継ぎ接ぎ的な印象は拭えず、もう少し慎重な配慮が必要だったと思われる。

第二楽章も、第一楽章と同様の趣向。弦楽器のピチカートに乗る木管楽器の第一主題は、深遠な空気を醸し出す。他方、弦楽器による変奏部では、艶のある優しいタッチの動きが次々と織り成すことで、暖色系の淡い色彩美が展開。低弦による第二主題も、かなり控え目な出だしが秀逸。頂点に至った際の朗々としたカンタービレとの対比が印象的であった。ただ、第一楽章と同様、後半の盛り上がりで、またもやテンポの引き締めがなされ、演奏の方向性が変わる。外面的な演奏効果は得られたが、緻密さは後退してしまった。

変わって第三楽章は、ベルギーのオーケストラらしい豪傑な響き。前二楽章でこれを隠していたあたりが憎い。快活なアレグロ・ジョコーソで、流れはよかったが、展開部後半のホルンによる主題の変奏で、指揮者とホルンとの連携ミスが生じ、一拍分のズレが生じてしまう。この瞬間、これまでのよかった音楽の流れは途絶えてしまった。こういう事故が起きると、オーケストラは「どうにかしなければ」という気持ちが先走るようになり、気合いと勢いが勝った雑な演奏に陥りやすい。この日も実際、そういった側面が強く現れてしまった。

第四楽章も、悪くはないが、随所に微細な綻びが散見され、前ニ楽章の出来に鑑みると、残念な結果に終わった。それまではあまり表に出てこなかった技術的な問題点の数々が、この第四楽章のシャコンヌでは、丸裸になって全て見えてきてしまったのだ。やはりシャコンヌは、難しい。熱演ではあったが、それ以上のものではなかった。

20111113-03

このオーケストラは、これまで耳にしたブリュッセルのオーケストラ(モネ歌劇場管及びベルギー国立管)と比べると、アンサンブルの統制がしっかりと取れており、「個」の集合体といった印象はあまり受けなかった。技術的に万全とは言えないが、地道によい音楽を続けている感じである。母体がオランダ語向けの公共放送局であることが影響しているのであろうか。とはいっても、響きそのものは、フランスのオーケストラに近い雰囲気を持っている。筆者の中での謎は未だ解明されていないが、ブリュッセルの音楽界の違った側面を垣間見た気もした。


(公演情報)

Brussels Philharmonic - het Vlaams Radio Orkest
Sunday 13.11.2011 15:00
Centre for Fine Arts / Henry Le Boeuf Hall

Michel Tabachnik conductor
Véronique Gens soprano
Brussels Philharmonic - het Vlaams Radio Orkest

Pierre Boulez, Livre pour cordes
Hector Berlioz, Les nuits d'été, op. 7
Johannes Brahms, Symphony no. 4, op. 98
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[2011/11/14 05:23] | 海外視聴記(ブリュッセル) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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