ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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シュトゥットガルト・ケルン行き(11年12月)②―大野指揮シュトゥットガルト州立歌劇場管
12月4日午前10時半、リーダーハレへ。大野和士指揮シュトゥットガルト州立歌劇場管弦楽団による演奏会である。

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マエストロ大野は、この日がシュトゥットガルト州立歌劇場管へのデビュー。Nacht-Gesichteをテーマに据え、ドヴォルザークの交響詩「野鳩」、シャリーノのAutoritratto nella notte、アルバン・ベルクのアルテンベルク歌曲集、プロコフィエフの交響曲第3番という大変意欲的なプログラムで本演奏会に挑んだ。客席内は、8割程度の入り。マニアックなプログラムの割には、よく入った方だといえる。

筆者の座席は、平土間中央上手側5列目。ベートーヴェンザールは、2000名近くを収容する大きなホールで、客席が扇状に広がっている。一昔前の公会堂のような造りだ。そのため、舞台上の音は拡散的に広がっていく傾向にあると予想するも、今回は前方席を確保したため、実態は不明。筆者の座席で聴く限り、ウェブ上の画像から想像したよりはまともな響きがしていた。

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午前11時すぎ、マエストロが登場。この数日のリハーサルを通じて両者の間に構築された信頼関係の強さが窺われる。マエストロの横顔からは、柔らかな笑顔とともに、この日の演奏会への意気込みの強さがにじみ出ていた。

プログラム前半一曲目は、ドヴォルザークの交響詩「野鳩」。初顔合わせのためか、マエストロのタクトは、普段よりも情報量が多め。各パートに対するアウフタクトを丁寧に出しながら、慎重な足取りで音楽を進める。
冒頭の葬送行進曲から、弦セクションのふくよかさ、木管セクションのしなやかさが融合し、哀愁を感じさせる響きが舞台上から立ち上がった。結婚の祝宴のシーンでは、表情に若干の硬さも感じられたが、暴発させることなく、折り目正しくまとめあげたあたりに、マエストロとオーケストラのバランス感覚の高さが表われていた。
後半に入り、弦セクションと木管セクションが伸びやかな旋律を歌い始めると、舞台上の空気は一気に融解し、活き活きとしたカンタービレが湧き上がり始めた。オーケストラが自然とテンションを上げ、音楽の悦びを体現している姿は、とても印象的であった。相手の懐に入り込むマエストロのセンスの良さは、抜群である。
終盤に登場する哀しげな野鳩の鳴き声は、音による視覚化ともいえるようなビジュアルさをもって、聴き手に迫る。最後は、感傷的になることなく、スッキリとした仕上げで、20分に及ぶ音のドラマが幕を閉じた。マエストロのデビューを飾るに相応しい充実の演奏であった。

プログラム前半二曲目は、イタリアの現代音楽の作曲家、サルヴァトーレ・シャリーノ作曲のAutoritratto nella notte。
限りない沈黙の下、常識を超えた多彩で個性的な楽器法の数々が、聴取が困難なほどの弱音で繰り広げられる。現代音楽の中でも最前衛と称すべき作品だが、マエストロは、沈黙のもたらす極度の緊張感を演出し、複雑怪奇な音の数々を非常にデリケートに浮かび上がらせていった。予習のためにネット上にアップされた録音を聞いた際には、さっぱり意味が分からなかったが、今回実演に接して、その面白さに気付かされた。
驚いたのは、聴衆の多くが、その異様ともいえるような演奏に集中し、そして面白さを共有していたことである。こうした光景は、マニアックな選曲と聴衆の質の高さで名高い読響の定期演奏会であっても、お目にかかることはできない。

プログラム前半三曲目は、アルバン・ベルクのアルテンベルク歌曲集。レベッカ・フォン・リピンスキが独唱を務めた。
シャリーノを聴いたばかりの耳には、アルバン・ベルクの前衛的な書法の数々も、不思議と馴染みやすく感じる。緩やかに、そして若干後ろ向きに揺れ動く響きの遷移は、20世紀前半のウィーンを想起させる。シュトゥットガルト州立歌劇場管の機能性の高さが印象付けられた。また、第三曲「きみは宇宙の果てを瞑想し」における神秘的な音響、第五曲「ここには平安がある」に垣間見られた重心の低い力強い音色は、アルバン・ベルクのオーケストレーションの魅力を十二分に伝えるものであった。独唱とのバランスの計り具合は、さすがマエストロである。
なお、レベッカ・フォン・リピンスキによる独唱は、手堅くまとめていたといえるが、圧倒的な存在感を示すほどではなかった。もっとも、独唱者にとって、この作品を魅力的に聴かせるのは、至難の業といえ、相対的に見れば、かなり良い線に至っていたと思われる。

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プログラム後半は、プロコフィエフの交響曲第3番。前衛的な書法、暴力的な響き、甘美な旋律が共存する不思議な作品である。無論、演奏上の難易度は高い。さすがのシュトゥットガルト州立歌劇場管も、手馴れていない模様で、苦労しながら演奏しているのが感じ取れる。
第一楽章冒頭から、マエストロは、オーケストラの手綱を締め、音楽の弛緩を防ぐべく、あらゆる手立てを講じる。それが功を奏したのか、第一楽章後半に至り、自然発生的にカンタービレが流れ出すと、今度は、締めていた手綱を幾ばくか解放し、小さく円を描くだけのシンプルなタクトに切り替えた。すると、音楽はスーッと前へと運び、そして、結尾は花びらが閉じるように収まった。一つの山を眺めているようだった。
第二楽章は、マエストロの物静かなタクトの下、神妙な足取りで音楽が進む。オーケストラの柔らかい響きが魅力的である。
第三楽章のスケルツォでは、コントラバス以外の弦楽器をそれぞれ3部に分けた13声部の弦楽器群により、前衛的な奏法が繰り広げられる。オーケストラの演奏には、若干の不器用さも窺われたが、各パートはキチンと整理されており、オーケストレーションの見通しは良好だった。
第四楽章では、重量感のある力強いサウンドが巨大な建造物のように浮かび上がった。なお、解釈によっては爆演系になることもあり、そのようなスタンスも、バシッと決まると圧倒的な感動を誘うが、この日の演奏は、そうした方向性とは一線を画す。マエストロは、楽章全体を通じ、知的なアプローチ。慎重すぎるようにも思われたが、この日のオーケストラの状況に照らすと、あれ以上に煽ると、演奏が崩れる危険もあり、ベストな選択であった。

カーテンコールでは、爆発的な拍手が湧き上がるというほどではなかったが、温かい拍手がいつまでも続いた。マエストロの表情からも、確かな手応えを感じている様子が窺われた。

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今回の演奏は、古典的な作品から現代音楽に至るまで、マエストロの手腕を示すには十二分すぎるほどの充実した内容であった。また、分厚い響きで、力強さを兼ね備えるシュトゥットガルト州立歌劇場管との相性の良さも、しっかりとアピールできていたといえる。シュトゥットガルト州立歌劇場のオペラ公演への出演が待ち望まれる。

終演後は、マエストロにご挨拶をし、クリスマス・マーケットで簡単に昼食を摂り、シュトゥットガルト中央駅へ。ICE974とICE122を乗り継ぎ、ケルンへ向かう。


(公演情報)

3. Sinfoniekonzert: Nacht-Gesichte
Sonntag, 04.12.2011, 11:00 Uhr // Liederhalle, Beethovensaal

Musikalische Leitung: Kazushi Ono
Sopran: Rebecca von Lipinski
Staatsorchester Stuttgart

Antonín Dvořák / DIE WALDTAUBE Sinfonische Dichtung OP. 110 (1896)
Salvatore Sciarrino / AUTORITRATTO NELLA NOTTE (1982)
Alban Berg / Fünf Orchesterlieder nach Ansichtskarten-Texten von Peter Altenberg op. 4 (1912)
Sergej Prokofjew / Sinfonie Nr. 3 c-moll op. 44 (1928)
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[2011/12/06 05:04] | 海外視聴記(シュトゥットガルト) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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