ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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シュトゥットガルト・ケルン行き(11年12月)③―シュテンツ指揮ケルン歌劇場「ナクソス島のアリアドネ」
12月4日午後6時前、ICE974とICE122を乗り継ぎ、ケルン中央駅に到着。宿泊先であるゲネウィッグ・コマーツ・ホテルにチェックイン。設備は質素だが、綺麗にまとめられており、駅前という立地の良さ、スタッフの愛想の良さ、お手頃な値段に照らすと、満足度は高い。

午後7時すぎ、ケルン歌劇場へ。マルクス・シュテンツ指揮ケルン歌劇場による「ナクソス島のアリアドネ」。今シーズンのプレミエ公演。日曜日の夜のためか、客席は7割程度の入りで、同じ価格帯の中で条件の良くないエリアは、列単位で席が空いていた。

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この歌劇場の階上席は、段々畑のような形状をしている。

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筆者の座席は、2.Rangの中央下手側Iブロックの1列目。このブロックは、前にせり出しているため、舞台からの距離も近く、視界を遮る物もない。値段も安く、かなりお得な座席である。

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この作品は、オーケストラが36人編成の室内オペラで、本編の前に置かれた長大なプロローグでオペラ制作過程の経緯やいざこざが描かれるという異質な作品である。「アリアドネ」の物語自体は、精神性の高い悲劇だが、この作品では、世俗的な茶番劇が大々的に混ぜられた結果、悲劇と喜劇の結合したユニークな作風に仕上げられた。
それゆえ、演出上は、精神と世俗、その間に立つ作曲家という3つの立ち位置のバランスが難しい。

また、音楽的にも、リヒャルト・シュトラウスの要求水準を満たすことは、至難の業といえる。
というのも、作曲家、悲劇を象徴するアリアドネ、喜劇を象徴するツェルビネッタという3種類のソプラノを主軸に、それぞれが展開する話の内容に対応したキャスト陣を揃えなければならない。シュトラウスが各役者に与えた音楽に妥協はなく、出番が少ない役者であっても、それ相応の実力者を配しなければ、ボロが露呈してしまう。
しかも、オーケストラは、室内楽の延長線上にあり、各奏者には、高度なソロが多く割り当てられている。シュトラウスの音楽のエッセンスが凝縮された透明度の高いオーケストレーションは、オーケストラに対して卓越した技巧と純度の高い合奏力を求める。
したがって、優れた上演に接する機会は、そうあるものではない。

この日の公演に関していえば、演出的にも音楽的にも、理想像とはいえないが、ケルン歌劇場の総合力が如何なく発揮されており、総じて納得できる仕上がりであった。

キャスト陣に関しては、作曲家、ツェルビネッタ及びバックスがプレミエメンバーとは異なっていた。最も拍手が大きかったのは、ツェルビネッタ役のアンナ・パリミナ。超絶技巧を駆使したオペラ史上屈指の難曲と名高い長大なアリアを、切れのある演技とともに、完璧に歌い上げ、これが観客の心を掴んだようだ。細めの声ゆえ、プロローグにおけるアンサンブルでは、相対的にみてインパクトに欠けていたが、喜劇の象徴という役回りをパリっと演じていたと思われる。作曲家役のステファニー・ハウツェールは、苦悩する役柄を見事に演じていたが、最高音に近いあたりで声に無理が生じていたのが惜しかった。アリアドネ役のバーバラ・ハーヴェマンも、落ち着きのある表現で好演だったが、やはり最高音に近いあたりで力みが感じられた。バックス役のスコット・マックアリスターは、声に伸びと力がなく、アリアドネに変身の奇跡をもたらす運命の恋人というイメージからは程遠かった。その他のキャストは概ね水準以上。アンサンブルのまとまりの良さから周到な準備の軌跡が窺われた。

ケルン・ギュルツェニヒ管も善戦していた。シュトラウス特有の和声感が花開くまでには至らず、また細かな傷も散見されたが、手堅くまとめられており、水準以上の仕上がりであったといえる。愛の二重唱のテーマなどの幅の広い旋律では、シュトラウスらしい豊麗な響きも立ち上がっていた。

シュテンツも、各場面を丁寧に創り上げていたが、彼の指揮は、やや求心力を欠くので、音楽的に地味な場面で緊張感が弛緩する瞬間が垣間見られたのが残念なところ。

演出に関しては、喜劇の要素を強く意識させるアプローチ。コメディのような演技や衣装がふんだんに用いられていたが、品位を失わないギリギリのところで止められていたあたりから、バランス感覚の良さが窺われる。作曲家、アリアドネ、ツェルビネッタという3つの軸も明快で、オーソドックスな中にモダンなセンスが光る。観ていて楽しくなる舞台であった。

もっとも、プロローグで作曲家が夢中に語っている際に、ホテルマン風の集団が舞台中央を颯爽と横切ったり、フィナーレでアリアドネとバックスが二重唱を歌っている際に、骸骨や原始人や動物風の衣装を着た役者が周囲をウロウロ歩き回るなど、コメディの要素を引っ張りすぎた場面も見受けられた。このあたりは、もう少しスッキリ創ってもよかったかもしれない。

ともあれ、圧倒的な感動を誘うというほどではなかったが、バランスの取れた良い公演であった。こういうレベルの高い公演が日常的に行われているということは、羨ましい限りである。

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終演後は、Fruh am Domでケルシュを数杯立ち飲みし、おとなしくホテルに戻った。翌朝は午前6時44分発のタリスでブリュッセルへ。毎度お馴染み、ブリュッセル中心部の鉄道渋滞のため、ブリュッセル南駅には20分の延着。しかも、先週金曜日に引き続き、この日も、市内のトラムとバスがストライキでほぼ壊滅していた。もっとも、5ヶ月間のブリュッセル滞在を経て、この程度では全く動じなくなった。


(公演情報)

ARIADNE AUF NAXOS / Richard Strauss (1864 - 1949)
So 04. Dez. 2011 Opernhaus / 19:30 bis 21:30

Musikalische Leitung - Markus Stenz
Inszenierung - Uwe Eric Laufenberg
Der Haushofmeister - Harald Kuhlmann
Ein Musiklehrer - Johannes Martin Kränzle
Der Komponist - Stephanie Houtzeel
Der Tenor / Bacchus - Scott MacAllister
Ein Offizier - Stefan Kohnke
Ein Tanzmeister - Martin Koch
Ein Perückenmacher - Sévag Serge Tachdjian
Ein Lakai - Young Doo Park
Zerbinetta - Anna Palimina
Primadonna / Ariadne - Barbara Haveman
Harlekin - Miljenko Turk
Scaramuccio - Gustavo Quaresma Ramos
Truffaldin - Matias Tosi
Brighella - Jeongki Cho
Najade - Gloria Rehm
Dryade - Adriana Bastidas Gamboa
Echo - Ji-Hyun An
Orchester Gürzenich-Orchester Köln
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[2011/12/06 05:08] | 海外視聴記(ケルン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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