ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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フライブルク・バロック管―ヘンデルのアリア集
12月6日午後8時前、パレ・デ・ボザールへ。フライブルク・バロック・オーケストラによる演奏会。フランスのカウンターテナー歌手フィリップ・ジャルスキーを独唱に迎え、ヘンデルのアリア及び管弦楽曲が披露された。バロックオペラファンが狂喜して喜びそうなラインナップである。

この日のチケットは早々に完売。ステージ上にまで客席が設けられていた。招待席と思われる平土間中央付近に多少の空席があったのが何とも勿体無い。数週間前に筆者が確保した座席は、舞台真横のバルコニー2列目で、座ってしまうと舞台の半分以上が死角になるが、このエリアは2列目が最後列ゆえ、ブリュッセルの流儀に従い、遠慮なく、立ち見で舞台を鳥瞰させていただいた。音響に関しては、オーケストラについては申し分なく、ジャルスキーの歌唱も何とか横からキャッチすることができた。

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筆者はバロックオペラについては不案内なので、印象を述べるにとどめるが、この日のプログラムは、実によく練られており、まるで一つの舞台を鑑賞しているかのような起承転結を感じ取れた。

快活な序曲で聴衆を惹き込むと、そのまま歌劇「オレステ」のアリアへ。ここまでで、ジャルスキーとオーケストラの響きを鑑賞する心の準備が出来上がった。

一呼吸置いて演奏されたセレナータ「パルナス山の祭典」からのレチタティーヴォとアリアは、小舟に揺られるようなゆったりとしたバウンド感と、物思いにふけるような柔らかい響きで、とても心地よい。その完成度の高さから、これは素晴らしい演奏会になるぞ、と予感した瞬間でもあった。

続いてオーケストラのみで演奏された合奏協奏曲は、フレッシュな演奏。古楽器らしい荒削りな響きが作品の面白さを浮かび上がらせていた。機動性を欠く箇所が若干見受けられ、完璧とまではいえなかったが、上々の仕上がりではあった。

再びジャルスキーが登場。歌劇「イメネオ」のアリアは、若干陽の傾いた午後のひと時を感じさせるような、しっとりとした楽想で、筆者は、若干まどろみ気味に。もっとも、自然にうとうとできるということは、音楽のクオリティの高さの証でもある。

プログラム前半の最後は、歌劇「アリオダンテ」のアリア。ジャルスキーの超絶技巧が花開く。オーケストラも、軽快な響きでパリッと仕上げ、文字通り、目が覚める演奏であった。

休憩を挟み、オーケストラの響きに深みが増した。奏者が会場の響きに慣れてきたためであろう。弱音が洗練され、響きの密度が上がったように感じられた。歌劇「ジュリアス・シーザー」のアリアでは、しなやかな歌唱と響きが心にスッと入ってくる。

柔らかく、しかし静かな情熱の迸る歌劇「アルチーナ」のアリアに心を満たされると、舞台上はアタッカで次のサラバンドへ。サラバンドは、非常にシンプルな器楽曲だが、彼らの演奏には一本の力強い筋が通っていた。聴衆の心は、ヘンデルの描いた深遠な世界へと導かれた。

舞台上にはジャルスキーが再登場し、この日の演奏会は佳境に差し掛かる。神妙な趣きの歌劇「ラダミスト」のアリアを経て、プログラムの最後を飾ったのは、歌劇「アグリッピーナ」のアリア。超絶技巧の数々が見事に決まっていて、圧巻。音楽的にも、ジャルスキーとオーケストラの間で火花が散るような、手に汗を握る展開であった。

アンコールは3曲。末尾を飾ったのは、あの有名な「オンブラ・マイ・フ」。質素で格調の高い演奏だった。個人的には、ブリュッセルに来てからの5ヶ月あまりを思い返し、涙が出そうになった。

ジャルスキーの歌唱は、実演で聴くと、気品がありながらも、とても情熱的で、聴き手に訴えかけるパワーを兼ね備えている。カウンターテナーという不利なポジションを微塵も感じさせない。楽譜の処理も非常に正確で、その実力は驚異的ともいえる。

フライブルク・バロック・オーケストラの実演を聴くのは、今回が2度目。その響きは、重すぎず軽すぎず、そして若々しく粗野なニュアンスだが決して雑になることはなく、色々な意味でバランスの取れた良い古楽オーケストラである。今回は舞台真横ゆえ、彼らのアンサンブルの手法を間近に観察できたが、音楽を自然な息吹で送り出すためのメカニズムを熟知していることがよく分かった。弦楽器のトップ奏者、トゥッティ奏者、通奏低音奏者、管楽器奏者のそれぞれが、音楽の潮流の中での自分の立ち位置を把握した上で、リレーのバトン送りのようにスムーズに連携をしながら、メンバー全員で音楽を牽引しているという感じであろうか。加えて、響きの重ね方や、フレーズの語尾のまとめ方の点で、そのサウンドは驚くほどに洗練されており、これらの点においても、他の古楽オーケストラとは一線を画している。

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カーテンコールはかなりの盛り上がりで、ホール内は納得感と充実感に包まれた。

20111206-02

予定では、半年間に及ぶ筆者のブリュッセル生活においては、今回がパレ・デ・ボザールで鑑賞する最後の演奏会。思い出に残る演奏会となった。


(公演情報)

Tuesday 06.12.2011 20:00
Centre for Fine Arts / Henry Le Boeuf Hall

Philippe Jaroussky countertenor
Freiburger Barockorchester

Georg Friedrich Händel
Ouverture (Riccardo primo, Re d'Inghilterra, HWV 23)
Aria "Agitato da fiere tempeste" (Oreste, HWV A 11)
Recitativo & Aria "Ho perso il caro ben" (Il Parnasso in festa, HWV 73)
Concerto grosso, op. 6/6, HWV 324
Aria "Se potessero i sospiri miei" (Imeneo, HWV 41)
Aria "Con l'ali di constanza" (Ariodante, HWV 33)
- pause -
Aria "L'angue offeso mai riposa" (Giulio Cesare in Egitto, HWV 17)
Aria "Mi lusinga il dolce affetto" (Alcina, HWV 34)
Sarabande (Almira, Königin von Kastilien, HWV 1)
Aria "Ombra cara" (Radamisto, HWV 12)
Aria "Come nubbe che fugge dal vento" (Agrippina, HWV 6)
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[2011/12/08 06:17] | 海外視聴記(ブリュッセル) | トラックバック(0) | コメント(2) |
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コメント
ジャルスキーとFBOによる同じプログラムのコンサートを二月にアムステルダムのコンセルトヘボウに聴きに行きます。一足お先に聴かれたご感想を興味深く拝読しました。
ヘンデルのオペラ・アリアは、3年前にやはりコンセルトヘボウでFBOとサラ・コノリーの組み合わせで聴いたのですが、曲目は全然違うしメゾとCTでは印象も異なるだろうし、期待してるんです。FBOは、色々と個性のあるバロック・アンサンブルの中でも、はったりのない正攻法で抜きん出ているし、のびのびしつつ緻密な演奏で安心して聴くことが出来ますね。
今回がボザールで聴かれる最後のコンサートとのこと。素晴らしい思い出に残るものでよかったですね。
[2011/12/08 08:22] URL | レイネ #NWeVXXfQ [ 編集 ]
レイネさま、早速コメントを頂戴し、ありがとうございました。アンコールのネタまでばらしてしまい、恐縮です。
不勉強ゆえ、拙いレビューしかできませんでしたが、素人目に見ても、この日の演奏会には、ぐいぐいと惹き込まれるような静かなパワーが漲っていたように思います。ヘンデルの楽曲がこれほどまでにドラマティックだとは知りませんでした。
アムステルダムで上演される頃には、両者の関係がさらに熟し、充実した演奏が繰り広げられることと思います。2ヵ月後が楽しみですね。
なお、ボザールはこの日が最後でしたが、ブリュッセルでの音楽鑑賞は、今月後半のモネ劇場「シンデレラ」が本当の最後。2回分のチケットを確保済で、AB両キャストかつ2人の指揮者で聴き比べをする予定です。
[2011/12/08 08:53] URL | 筆者 #- [ 編集 ]
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