ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ケルン・ミュンヘン行き(11年12月)①―サラステ指揮ケルンWDR響
12月9日夕方、タリスにてブリュッセル南駅からケルン中央駅へ。午後7時半すぎ、ケルンのフィルハーモニーに到着。ユッカ=ペッカ・サラステ指揮ケルンWDR交響楽団による定期演奏会。ベートーヴェンの序曲「コリオラン」、シェーンベルクのピアノ協奏曲、ブラームスの交響曲第3番が採り上げられた。

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筆者の座席は、Fブロック17列目。正面中央である。弦楽器の音が若干遠く、多少ピンボケ気味に感じたが、舞台上に並んだ各楽器の響きは立体的に浮かび上がり、残響と音圧も適度に感じられる。印象としては、サントリーホールの2階席中央前方よりも、やや舞台に近づいたといったところか。このホールの音響は、文句なくトップクラスといえる。

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客席の入りは75%くらい。客席の中央付近は、馴染みの定期会員が占めているため、とてもマナーが良かったが、端や後方には一見の観光客が散見され、演奏中にフラッシュを焚いたり、携帯を鳴らしたり、楽章間でこれ見よがしに拍手をしたりなど、ありとあらゆる妨害を展開してくれた。親に連れられた小学生くらいの子供達が静かに座って聴いていたのとは好対照。チケット料金が安いと、場違いな客が混ざるから困る。

プログラム前半一曲目は、ベートーヴェンの序曲「コリオラン」。この曲は、古代ローマの英雄コリオラヌスを主人公にしたコリンの戯曲を題材とした演奏会用序曲で、第二主題にロマンチックなムードを感じさせるが、曲全体を通じ、8分音符単位で時々刻々と流れる緻密な構成となっているため、旋律の伸びやかさと構造の厳格さの兼ね合いが難しい。また、後期の作品と比べると、造りがシンプルなため、粗が見えやすく、勢いで押し切ると陳腐な印象になってしまう。それゆえ、多くの巨匠らが、工夫を凝らしながら、様々な流儀により演奏を繰り広げてきた。

この日のサラステは、ドイツロマン派に引き寄せたアプローチ。フレーズの伸縮を多用するが、足し算よりも引き算を重視したさっぱり系の響きを志向し、各旋律を所定の枠の中にストンと収める。音楽の見通しが良く、オーケストラ全体で8分音符単位の鼓動が共有できているため、一つの生命体の息吹のように感じられた。弦楽器の素養のある指揮者は、内声部の刻みを骨格に据えた音楽創りを目指すので、音楽の安定感と自然さは抜群である。

もちろん、ドイツのオーケストラらしい音の厚みも要所でしっかりと現れていた。冒頭の弦楽器のユニゾンでは、低弦が空気を動かすし、終盤のクライマックスに向けて音を積み上げていく箇所では、ホルンと中低弦が充実の響きで全体を支える。

過度に熱くはならないが、音楽の高揚感は感じられ、作品全体が一つの絵巻物のように浮かび上がってきた。熱血漢には物足りないだろうが、これはこれで一つの成功例といえるだろう。

プログラム前半二曲目は、キリル・ゲルシテインを独奏に迎え、シェーンベルクのピアノ協奏曲。

この日の演奏では、ホールの機能性の高さを改めて認識することができた。このような大きな会場で、ピアノそのものの響きを堪能できるというのは、そうそうある話ではない。オーケストラとのバランスも良く、協奏曲の醍醐味を存分に味わうことができた。

作品自体は、厳格な十二音技法により書かれているため、かなり難解だが、この日の演奏では、しなやかなフレーズが飛び交い、メリハリも明快であったため、だいぶ聴きやすく仕上がっていたといえる。オーケストラは、集中力を弛緩させることなく、適度な緊張感の下で、きっちりと仕事をしており、安定感があった。

音楽的なアピールがもう少し強いと、より説得的な演奏になったように思われるが、「人生は何もなく過ぎてゆく」というこの作品の帰結を前提に全体を鳥瞰すると、むしろ綺麗にまとめてしまった方がよいのかもしれない。

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一つ余談だが、このホールでは、ピアノの出し入れは、ステージの一部を可動式リフトで下げて行う。サントリーホールと同じ方式である。多くの観客が物珍しそうに観察していた。

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さて、休憩を挟み、プログラム後半は、ブラームスの交響曲第3番。弦楽器が1プルトずつ増強され、16型のフル編成による演奏。プログラム前半で気になった弦楽器の音圧の物足りなさも、だいぶ解消された。

サラステのアプローチは、基本的にはベートーヴェンと同様。草食系ドイツロマン派とでも評しようか。サラステは、旋律の歌わせ方が上手く、響きに対するセンスが鋭敏であり、この作品では、そんな彼の持ち味が特に発揮されていたと思われる。

第一楽章冒頭から、音楽の流れがとてもスムーズである。4分の6拍子の拍子感と8分音符の流れが呼応しているのが素晴らしい。また、第二主題の木管楽器のsubito ppは絶品であった。展開部では、ドイツのオーケストラらしいパワフルな中低音が鳴り響き、いわゆるモダンなブラームスの理想型に近いバランスが実現されていた。コーダ冒頭では、ボルテージが上がり、勢いが増したが、過度に力むことなく、そのまま着地点に向けて収まっていったあたりが秀逸である。

第二楽章でも、旋律が伸びやかに歌い、和声が鮮やかに花開く。速めのテンポ感が心地よい。なお、冒頭の中低弦が完璧な仕上がりであったのには、感心させられた。ここは、シンプルだが、バランスが崩れたり、濁りが生じたりと、割と粗が出やすい箇所である。また、コーダのテンポ設定も巧みで、過度に構えることなく、綺麗に一つの山を描き上げていた。巷には脂ぎった演奏が多く存在するが、適度なメリハリをつけつつも、全体をさらりと聴かせたのはさすがである。中間部のコラール風の断片のつながりで、管と弦で発音のタイミングにズレが生じたのが惜しい。

最も感銘を受けたのは、第三楽章である。淡く上品な旋律の中に、8分音符の伴奏が見事に織り込まれ、多彩な響きの移ろいが瞬いた。

第四楽章では、オーケストラに熱が帯び、腰の据わった響きが展開した。ただ、力が入っても、オーケストラのキャパシティに余裕があるので、息苦しくはならなかった。コーダも失速することなく、綺麗にまとまった。末尾に回想される第一楽章第一主題において、弦楽器の移弦のタイミングがパーフェクトではなく、旋律に濁りが生じたのが惜しかった(重箱の隅を突くようだが、この作品の最大の魅力は、末尾9小節間の澄み渡る清らかさにあるといっても過言ではない。)。

ケルンWDR響は、さすがの貫禄で、伝統に支えられた底力を感じさせた。明るめのモダンな響きで、日本の在京プロオーケストラと方向性を同じくするが、響きのキメの細かさと和声のバランスの点で、一線を画している。この僅かな差こそが、トップクラスになれるかどうかの境目なのだ。技術的な傷も若干見られたが、全般を通じ、プロフェッショナルを感じさせる良い仕事ぶりであった。

熱狂はないが、しみじみとした感慨に浸れる良い演奏会であった。

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終演後は、ブラウハウス・ジオンで簡単に食事を済ませ、午後11時46分発のシティナイトラインCNL419にてミュンヘンへ。この時期、ドイツ郊外の家々では、窓やベランダ、庭木などに、ワンポイントのイルミネーションを施している。そうした風景を嗜んでいるうちに、自然と眠りについていた。

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ミュンヘン到着は、翌朝の午前7時半前。この週末、西欧の各都市は冷え込みが厳しい。ミュンヘン市内も朝方から雪が舞っていた。中央駅到着後、宿泊先であるキングス・ホテル・ファースト・クラスにアーリーチェックインし、しばし休憩。


(公演情報)

09.12.2011 Friday 20:00
Kölner Philharmonie

Kirill Gerstein Klavier
WDR Sinfonieorchester Köln
Jukka-Pekka Saraste Dirigent

Ludwig van Beethoven / Ouvertüre c-Moll zu Heinrich Joseph von Collins Trauerspiel "Coriolan" op. 62 (1807) für Orchester
Arnold Schönberg / Konzert für Klavier und Orchester op. 42 (1942)
Johannes Brahms / Sinfonie Nr. 3 F-Dur op. 90 (1883)
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[2011/12/13 06:52] | 海外視聴記(ケルン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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