ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
ケルン・ミュンヘン行き(11年12月)③―マゼール指揮ミュンヘンフィル―ワーグナーとブルックナー
12月11日午前10時半ころ、ガスタイク文化センターへ。ロリン・マゼール指揮ミュンヘンフィルによる定期演奏会。ワーグナーとブルックナーの作品が採り上げられた。

20111211-01

チケットは早期に完売で、ホール内はほぼ満席。ミュンヘンフィルは、来シーズンより期間限定でマゼールを首席指揮者に迎え、建て直しを図っている。客演する指揮者のラインナップの充実度には、目を見張るものがあり、現在最も勢いのあるオーケストラの一つといえる。

筆者の座席は、Jブロック4列目で、下手側中段付近。ガスタイクのホールは、左右非対称な形状で有名だが、音響は抜群で、筆者の座席では、適度な残響に包まれた木目調の柔らかい響きが堪能できた。

20111211-02

プログラム前半は、ワーグナーの作品。一曲目は、「タンホイザー」から序曲とバッカナール。パリ版をベースにしたバージョンで、両者は続けて演奏された。

マゼール御大は、神妙な趣きで静かに指揮台に上がり、序曲冒頭の巡礼の合唱を、遠方からゆっくりゆっくり紡ぎ出し始めた。弦楽器が旋律を歌い出すと、音楽は徐々に前方へ。巡礼の合唱が眼前を通り過ぎるも、すぐに遠ざかり、彼方へと沈んで行った。
次に登場するバッカナールの旋律では、鮮やかな色彩感が煌いた。タンホイザーの旋律は、俄然やる気。畳み掛けるように突き進み、豊麗なオーケストラのサウンドが舞台上から湧き上がる。フォルテでガツンと楔を打ち込むあたりに、マゼール流のデフォルメが垣間見られる。
2人のソロヴァイオリンとクラリネットにより表現されるタンホイザーとヴェーヌスの対話は、優美な主旋律と滑舌の良い対旋律が見事に絡み合い、本当にしゃべっているようであった。

「バッカナール」に入ると、抑え気味だったオーケストラが一気に花開き、ヴェーヌスベルクの官能の狂宴が繰り広げられる。これは圧巻。舞台の情景が目に浮かぶようだ。音楽的な完成度も極めて高く、こういう曲だったのか、と初めて腑に落ちた。筆者が過去に聴いた演奏の数々は、いったい何だったのだろうか。
愛欲のバレエがこれでもかとばかりに描かれた後、末尾では「タンホイザー」の幕切れ直前を想起させるような悟りの境地が描かれ、20分に及ぶドラマは、静かに幕を閉じた。

客席は呆気に取られた様子で、ブラボーすら叫べない。「タンホイザー」のストーリーとエッセンスを濃縮したような密度があり、これだけでも、だいぶお腹がいっぱいである。

二曲目は、「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死。

「前奏曲」冒頭は、例によって、止まりそうなほどのスロースタート。いや、ほぼ止まっていた。それゆえ、ホール内の空気は、依然として、直前に演奏された「タンホイザー」の末尾に窺われた神妙さの延長線上にある。
音程を上げながら三回繰り返されるトリスタン和音が適度な緊張感と粘着度で示されると、「愛の動機」の無限旋律が相互に絡み合い、二重らせんを描きながら天へと昇って行く。小さな流れが徐々に集結し、脈々とした大きな流れへと発展していく過程は、実に見事。キメが細かく、響きに一寸の淀みも感じさせないあたりが凄い。

続く「愛の死」では、トロンボーンのコラールの高貴な優しさに心を奪われる。大きくうねる旋律により導かれるクライマックスは、歌心に満ちているが、遠くから眺めるような枯れた表情でもある。マゼール御大の深い愛情が注がれていた。
そして、全てを語り終えると、音楽は、静かに、そして穏やかに収束し、優しい微笑みとともに幕を閉じる。

二曲合わせて50分。とてつもないワーグナーであった。演奏後も、神妙な趣きを変えることなく、でもちょっとだけシタリ顔で、ゆっくりゆっくり舞台から引き上げる御大の背中は、いつも以上に大きく見えた。

20111211-04

プログラム後半は、ブルックナーの交響曲第3番。ワーグナーからの引用が多く含まれ、プログラム前半との関連性が強い。

こちらは、マゼール御大のやりたい放題。神妙な趣きであったプログラム前半とは対照的だ。

第一楽章は、御大の若き頃を髣髴とさせるような好き放題ぶりだったが、御大がやると、それらが全てバシッと決まるから、許せてしまう。
冒頭は、あえて速めのテンポで開始したが、クレッシェンドに合わせてどんどんブレーキをかけ、フォルテのユニゾンで最大限のデフォルメをかける。作為的に聴こえないのが不思議だ。あまりに見事なマゼール節に、聴いていて腹がよじれそうだった。プログラム前半では控え目だった金管セクションも、要所で豪快に鳴らし、サウンドに十分な量感をもたらしていた。また、まとわりつくような第二主題や、トリスタン和音を想起させるフレーズの処理には、プログラム前半との親和性が強く感じられた。
展開部、再現部を通じて、マゼール御大の構成力には、ただただ脱帽するのみ。モチーフの性格付けが首尾一貫しており、前向きなフレッシュさと回顧的な穏やかさとがくっきりと描き分けられていた。この作品の一般的な世界観を超越してしまっているようにも感じられた。
コーダでは、C-H-B-Aの下降音型が遠くから徐々に迫ってきて、ややシビアな空気のまま、結尾に至る。

第二楽章は、一転して真面目なモード。美しく内向的な旋律は、明るく伸びやかで、どこまでも澄み渡っている。他方で、この楽章では、書法にワーグナーの影響が反映されているため、プログラム前半の神妙さも影を落とす。まるで自伝のようであった。飽くなき挑戦を続けてきたマゼール御大による昔語り。最後は、その軌跡を回顧し、静かに見守るかのように、穏やかに収まった。

第三楽章は、スケルツォをスマートに決めたかと思うと、トリオの田舎風の旋律が羽目を外して飛び回る。マゼール御大の挑戦は、まだまだ続く。

第四楽章も、冒頭からストレートで、推進力があった。もちろん、マゼール節も全開。第二主題では、4小節目3、4拍目で執拗な溜めを入れる。これは、5小節目のmfで豊潤なサウンドをドッと湧き上がらせるための仕掛けと思われるが、慣れない奏法にオーケストラの方がビビッてしまい、十分に活きてなかったのは、もはやご愛嬌。第二主題の音型の対旋律として、朗々と歌う管楽器の2分音符の雄大さは、実に立派だった。
澄んだ響きで、明るく前向きに音楽が進んでゆくが、中盤でシンコペーションが連続する混迷の箇所では、あえて響きをグチャグチャにして、おどろおどろしく仕立てる。これがターニングポイントとして機能し、音楽はクライマックスに向けて直進。第一楽章冒頭のテーマが戻り、大団円。痛烈なアクセントも期待通りで、マゼール御大による勝利の賛歌が鳴り響いた。

ブルックナー信者が聴いたら、腹の底から煮えくり返って激怒しそうな演奏。しかし、「そもそもブルックナーとは」という台詞とともに、古臭い演奏スタイルに固執し続ける頭の固い輩に対するアンチテーゼとして、非常に新鮮なブルックナーであった。
また、ミュンヘンフィルの巧さも、尋常ではない。ブルックナー演奏に関しては、世界一ではなかろうか。弦楽器の分散和音や、木管楽器のオブリガートが、響きの遷移を見事に浮かび上がらせていた。細部をここまで磨き上げられる技術力と合奏力、そしてそれを支える意識の高さは、他のオーケストラ団体の追随を許さない。

カーテンコールでは、マゼール御大にようやく笑顔が見られる。しかし、おそらくこれも計算済みの演技。一流の役者である。オーケストラを立てる立ち振舞いも素敵だった。

20111211-03

幼少時から神童と呼ばれ、数々の名門団体の舞台を渡り歩きつつも、いわゆる頂点と称されるポジションには恵まれなかったマゼール御大。意外と苦労人である。非凡な才能に溺れることなく、絶えず挑戦を続けてきた芸風が、ここに来て、見事に結実しつつあるように思われる。筆者もこういう年の取り方をしてみたいものである。

終演後は、徒歩でマリエン広場へ。有名レストラン、ドニスルに入るも、店内には観光地ズレした嫌なムードが立ち込めており、案の定、料理もサービスもクオリティは低い。さっさと飛び出し、ミュンヘン工科大学の近くにある麺処「匠」ミュンヘン支店で食べ直し。黒霧島ロックを嗜み、味噌ラーメンを食す。至福のひと時。

夕方、ホテルに戻り、荷物をピックアップした後、午後6時すぎに再び、バイエルン国立歌劇場へ。バレエ公演「イリュージョン―白鳥の湖のように」を、最上階の端の座席で途中まで観劇。舞台は半分くらいしか見えなかったが、初めて観た本場のバレエは、バレエの面白さを筆者に教えてくれた。立ち位置や各役者の仕草が実に艶やか。舞台上の動きにテンポ感がある。なお、オーケストラピットには、バイエルン国立歌劇場管が入っていたが、こちらは明らかにぶっつけ本番で、音が荒れていた。

午後10時前に退席し、ミュンヘン中央駅へ。そして午後10時47分発のシティナイトラインCNL418でケルンに向かう。シティナイトラインも今回が乗り収めだ。午前5時43分にケルン中央駅に到着し、約1時間の乗り継ぎで、タリスに乗車。いつものように、ブリュッセル中心部の鉄道渋滞のため、ブリュッセル南駅には18分の延着。もはや何も言うまい。

20111211-05


(公演情報)

Sonntag, 11. Dezember 2011, 11:00 Uhr
Die Münchner Philharmoniker
Lorin Maazel, Dirigent

Richard Wagner / Ouvertüre und Venusberg-Bacchanale aus "Tannhäuser"
Richard Wagner / Vorspiel und "Liebestod" aus "Tristan und Isolde"
Anton Bruckner / Symphonie Nr. 3 d-Moll (Endfassung 1889)
スポンサーサイト
[2011/12/15 07:09] | 海外視聴記(ミュンヘン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<ベルリン行き(11年12月)①―ラトル指揮ベルリンフィル「大地の歌」ほか | ホーム | ケルン・ミュンヘン行き(11年12月)②―メータ指揮バイエルン国立歌劇場「トゥーランドット」>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/95-309e0df6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。