ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ベルリン行き(11年12月)①―ラトル指揮ベルリンフィル「大地の歌」ほか
12月17日朝、SN2581便にてベルリンテーゲル空港へ向かう。空港に降り立ち、バスとSバーンを乗り継いで、宿泊先であるNHホテル フリードリッヒシュトラッセへ。フリードリッヒシュトラッセ駅は、ベルリン市内の交通の要で、どこへ行くにも交通の便が良い。駅前に立地するこのホテルは、4つ星に相応しいサービスと快適さを提供する。

チェックインの後、コンツェルトハウス前の広場で行われている有名なクリスマスマーケットへ。欧州各地の物産が並ぶ国際色豊かなマーケットゆえ、ドイツらしさを味わいたい人には物足りないかもしれない。一通り見て回った後、1621年創業のベルリン最古のレストラン、ツア・レツテン・インスタンツへ。地元客や観光客がひっきりなしに来訪しており、予約が必須のようだ。午後3時頃という中途半端な時間ゆえ、何とか席を確保する。頂いたのは、素朴な味わいのアイスバイン。すごいボリュームゆえ、少食の人には厳しいかもしれない。

満腹になったので、いったんホテルに戻り、しばし休憩。

午後7時頃、ポツダム広場周辺のクリスマスマーケットを横目に、フィルハーモニーへ。この日は、サイモン・ラトル指揮ベルリンフィルによる定期演奏会。ヤナーチェクの「利口な女狐の物語」最終場、マーラーの交響曲「大地の歌」が採り上げられた。客席には、観光客の姿がかなり見受けられたが、日本のコンサートホールと同様、静寂を共有できる雰囲気が成り立っていた。

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筆者の座席は、Aブロック中央6列目。良い座席は会員券で捌けてしまっており、一般発売開始時に残っていた座席の中では、条件の良い座席を選んだつもりである。この座席の場合、音の塊が上空を通過していくのが感じ取れ、また、ヴァイオリンの生音が若干混じるが、適度な残響を伴い、ベルリンフィルらしい響きがダイレクトに感じ取れた。舞台からの距離が近いため、歌手の息づかいが感じられるのは、この座席のメリットか。一般的には、このホールでは、Aブロック中央後方列、あるいはBブロック中央前方列あたりがベストかもしれない。

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プログラム前半は、ヤナーチェクの「利口な女狐の物語」最終場。パーセクの居酒屋の庭で、パーセクの妻が校長の相手をしているところへ森番が登場し、しばしやり取りを行った後、森番が森の中で全曲を締めくくるモノローグを歌うというストーリーで、東洋の輪廻思想にもつながる生命の再生の観念が描かれたと一般的には理解されている。

演奏の方だが、残念ながら、音楽的な完成度はかなり低かった。個々の奏者の奏でる楽器の値段が高いので、響き自体は良いのだが、特に前半は、パッチワークで、音楽もストーリーも流れない。相槌を打つような断片の数々をフル装備でガッチリと弾こうとしていたのが原因だろう。モノローグの後半になって、ようやく大きな波が生まれてきたが、今度は、交響詩のような巨大スケールのシンフォニックサウンドが、森番役のジェラルド・フィンリーの歌唱と噛み合わない。全曲を通じ、各奏者によるアプローチの仕方にも戸惑いが垣間見られ、雲のような捉えどころのない空気が立ちこめたまま、幕となった。ベルリンフィルは、オペラには不向きだと言われるが、まさにその通りだと痛感した。

歌手陣の中では、森番役のフィンリーが、明るく朗々とした歌唱で、一人奮闘。演奏会形式ではあったものの、彼の表情の多彩さがストーリーの理解を助けた。

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休憩を挟み、プログラム後半は、マーラーの交響曲「大地の歌」。前半とは打って変わって、冒頭からあのベルリンフィルのサウンドが煌びやかに展開した。生み出される音楽の安定感が前半のヤナーチェクとは雲泥の差。スコアの隅々まで熟知していることが手に取るように分かり、然るべき音が然るべき所に見事に収まっていた。樫本大進のソロも冴え、コンサートマスターのポジションが板についてきた感じがする。

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音楽が化けだしたのは、第二楽章。絶えず揺れ動くヴァイオリンのピアニシモがデリケートの極限を究めると、深みのあるアンネ=ゾフィー・フォン・オッターの歌唱とともに、オーケストラ全体が弱音の美を追究し始めた。最後の一節でパッと花が開くも、末尾は枯れた涙とともに消えていった。

楽しげな第三楽章も、楽しげなメロディーが快調である。青春を語るスチュアート・スケルトンの熱唱とともに、しなやかな旋律美が織り成した。

続く第四楽章では、蓮の花を摘む乙女のシーンにおける弦楽器と木管楽器による研ぎ澄まされた弱音の表現が神業であった。完璧に近いことは言うまでもなく、各奏者の心も十分にこもっていた。技術に音楽が結び付くとは、こういうことを言うのだろう。馬を駆ける若者のシーンは、はっちゃけた感じで、お祭りのようであった(良くも悪くもラトルらしかった)が、技術的にはバシッと決まっていたので、不満はない。

第五楽章は、出だしは四角四面でやや鈍重な動きだったが、スケルトンがこれでもかとばかりに攻めまくり、手に汗を握る展開。高いテンションでありながらも、技術的な破綻が全くなく、素晴らしい歌唱であった。

この日の白眉は、第六楽章。音楽の彫りが深く、緊張感も高い。ラトルは、随所で静寂ないし無音の美を演出し、オーケストラも究極のピアニシモを醸し出す。フルート首席のパユが上手すぎである。また、ところどころ、コントラバスや低音金管が、内向的で重いアクセントを響かせ、音楽に凄みが加わる。「告別」と題されたこの楽章に相応しいオッターの渾身の表現が実に的確に浮かび上がっていた。

カーテンコールは大いに盛り上がった。一部のファンが根気強く拍手を続けた結果、一般参賀も。筆者自身、この日の「大地の歌」は、それだけの拍手に値する名演であったと思う。

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この日の「大地の歌」は、二人の歌手の並々ならぬ気概にオーケストラが感化され、それが最終楽章で結実したという印象だ。オッターは、喉を若干消耗していたようにも見受けられたが、作品に対する献身的な姿勢が素晴らしく、圧倒的な表現力で聴衆を魅了した。スケルトンも、声をよくコントロールしながら、この難役の異常さを力強くアピールできていた。

ラトル&ベルリンフィルは、「大地の歌」の特徴の一つといえる描写的なオーケストレーションの数々を、構えることなく、リラックスした自然体で描き出していた。個々の奏者の技術は桁違いで、どの部分を切り出しても、力みが全くない。楽器間の旋律の遷移をここまで自然に成し遂げる集団を、筆者は他に知らない。

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今のベルリンフィルは、一昔前のベルリンフィルとは、全く別物と思われる。しかし、磨きぬかれ、そして澄み渡った音のグラデーションは、今のベルリンフィルにしかない持ち味であるし、各楽器が奏でる明るく優美な旋律美も魅力的だ。各奏者が強い上昇志向と好奇心を携えており、本番演奏中も、常に新たな挑戦を狙い続けているのも面白い。そんな彼らにとって、柔軟性に富み、伸び伸びと演奏できる場を提供してくれるラトルは、都合の良いマエストロなのだろう。ソリスト集団によるリベラリズムの究極を突き進むベルリンフィル。伝統的なオーケストラ像からはかけ離れているが、未来のオーケストラ像の一つを暗示するものとして目が離せない存在だ。

終演後は、ソニーセンター内の屋台でカリーブルストとグリューワイン、そしてリンデンブロイで白ソーセージとビールを嗜み、ホテルに戻る。ドイツに来ると、ついついソーセージを食べ過ぎてしまうのが問題である。


(公演情報)

Sat 17. December 2011 8 pm
Philharmonie

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle Conductor

Anne Sofie von Otter Mezzo-Soprano
Stuart Skelton Tenor
Gerald Finley Bass-Baritone

Leoš Janáček
The Cunning Little Vixen: Final Scene
Gustav Mahler
Das Lied von der Erde
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