ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ベルリン行き(11年12月)②―鈴木指揮ベルリンドイツ響―バッハ&モーツァルト
12月18日午前、Sバーンにてオラエニンブルグへ。ザクセンハウゼン強制収容所の跡地を見学した。この収容所は、1936年に建てられ、1945年までに10万人以上のユダヤ人が犠牲になった。ミュージアムには、生々しい過去が留められている。人間として一度は足を踏み入れておくべき場所といえよう。戦争の記憶を後世に伝えようとする彼らの努力には、見習うべきところが多いと思われる。

夕方、ツォー駅前のクリスマスマーケットを散策。こちらは、遊園地のような雰囲気だ。遅めの昼食を済ませ、いったんホテルに戻る。

午後7時頃、フィルハーモニーへ。鈴木雅明指揮ベルリン・ドイツ交響楽団による定期演奏会。バッハの管弦楽組曲第1番及びカンタータBWV63、並びにモーツァルトの大ミサ曲が採り上げられた。鈴木は、ここベルリンでも、バッハ演奏の権威としてその名が轟いている。日本人として悦ばしい限りである。

筆者の座席は、Bブロック6列目中央。6列目といっても、前2列は両端のみなので、実質的には4列目に相当する。前日の予想通り、この座席では、Aブロックの上空を通過した音の塊がそのまま届いてくる。フィルハーモニーの中で最も音響の良い場所といえるだろう。今年5月にBブロック7列目の端の方で聴いたときは、音がだいぶ遠く感じられたので、このホールの場合は、絶対に中央よりの座席を選ぶべきである。

20111218-01

プログラム前半一曲目は、バッハの管弦楽組曲第1番。

鈴木流のアーティキュレーションが徹底されており、ディテールまで丹念に創り込まれている。全てが計算され尽くされており、音符の一つひとつに息吹が吹き込まれていた。
キビキビとしたリズム感や、柔和かつ流暢な語り口が、バランスよく織り込まれているのも秀逸。各舞曲の面白さが見事に浮かび上がる。声部の分離が非常に明晰であったのにも驚かされた。
手垢が洗い流され、瑞々しい素肌が戻ってきたかのような新鮮な響きが楽しめた。

演奏後は、弦楽器と同じく細かいパッセージの連続を強いられるオーボエとファゴットの奮闘ぶりに、熱い拍手が贈られた。

プログラム前半二曲目は、バッハのカンタータBWV63「キリストの徒よ、この日を掘り刻め」。バッハがワイマールの宮廷楽師長に任命された1714年のクリスマスに演奏された曲で、冒頭と最後に祝祭的な合唱曲が置かれ、その間に内省的な5曲のレチタティーボないしアリアが配されている。

この日は、祝祭的な合唱曲については、目の覚めるような華やかな響きで聴き応えがあったが、中間に位置するレチタティーボないしアリアは、独唱陣の出来が芳しくなく、かなり残念な印象だった。
テノールのロター・オディニウスは、声の伸び、表現の幅ともに、上々であったが、ソプラノのシモナ・シャトゥロヴァーは、どこか声に引っ掛かりがあり、キレがない(調子が悪かったのかもしれない。)。アルトのアネッテ・マルケルトは、顔の表情は多彩だが、声は暗くて単調。細かい動きがモゴモゴし、眠くなる。バスのドミニク・ヴェルナーは、体格の割りに響きが薄く、母音のふくよかさが届いてこない。
耳を澄ますと、オーケストラに関しては、精緻に構築されていることに気付かされた。しかし、曲の構成上、主体は独唱で、オーケストラは伴奏にすぎないため、独唱が潰れると全てが台無しになる。
バッハのカンタータを聴くには、ホールが大きすぎたのだろうか。
ともあれ、バッハの難しさを改めて痛感させられたプログラムであった。

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休憩を挟み、プログラム後半は、モーツァルトの大ミサ曲ハ短調K.427。楽器の編成もやや大きくなった。

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第一曲キリエは、神妙な趣きで音楽が進行。テンポ感といい、響きの重さの加減といい、この時期のモーツァルトの理想的な展開である。無論、従前の演奏スタイルの追認ではなく、アーティキュレーションの洗い直しがなされているため、響きの純度は高く、そして新鮮である。バッハではやや大味な印象であったRIAS室内合唱団も、大ミサ曲では、むしろその響きがプラスに働き、適度なボリューム感で音楽の流れを支えていた。

第二曲グローリアは、七つの部分からなるが、一つ目の「いと高きところでは」は、フーガがガッチリと組み合わさり、見事な仕上がり。勢いに任せて破綻しがちな曲だが、鈴木はしっかりと手綱を締め、リズムの弛緩を防ぐ。指揮者としての力量も相当なものだと感じた。
他方、二つ目の「われら主をたたえ」は、ヴェロニク・ジャンスによる独唱だが、これは頂けなかった。16分音符のパッセージが団子状になってしまい、オーケストラの好サポートをぶち壊し。
三つ目の「主の光栄の大いなるがために」で、腰の据わった弦楽器と、トロンボーンに支えられた合唱が、荘厳な響きを創出するも、四つ目の「主なる天主」では、シャトゥロヴァーとジャンスの二重唱がチグハグで、全然噛みあわない。前者は必死で守りに徹しているような歌い方、後者は尖ったアクセントと団子状の16分音符、聞くに堪えなかった。
五つ目の「世の罪を除き給う」は、この日の一番の聴き処。厳格な付点のリズムに導かれ、二部合唱とトロンボーンを軸にした管楽器の響きが溶け合い、堂々としたラルゴの曲想の中に、深い感情が注ぎ込まれた名演であった。
六つ目の「そは主イエス・キリスト」は、相変わらず独唱が冴えなかったので、印象は乏しいが、七つ目の「イエス・キリスト」は、一つ目と同様、合唱とオーケストラによるフーガの完成度が素晴らしく、感銘を受けた。

第三曲クレドは、二つの部分からなるが、一つ目の「われは唯一の天主を信ず」は、シンプルにまとめられ、また、二つ目の「人体をうけて人となり」では、シャトゥロヴァーが、弱い線ながらも、何とか無難に歌い上げ、無事に通過。

第四曲サンクトゥス、第五曲ペネディクトゥスの重唱部分を卒なく終え、最後は合唱が入り大いに盛り上がって曲が閉じられた。

カーテンコールでは、合唱に対する拍手がとりわけ盛大であった。独唱陣に対する拍手は芳しくなかったが、オーケストラの各セクションに対しては温かい拍手が贈られた。フィルハーモニーの聴衆は耳が肥えている。

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ベルリン・ドイツ響は、今回初めて実演に接したが、とても真面目なオーケストラで、一つひとつの演奏会に真摯かつ一生懸命に取り組んでいる様子が好印象であった。もちろん、一流オーケストラの素質は十分に兼ね備えていて、その技術水準は、他のドイツの主要オーケストラと肩を並べるレベルにある。在京オーケストラは、音楽的あるいは技術的な安定性の点で、大きく水をあけられているといわざるを得ない。ベルリンのクラシック音楽層の厚さを実感した。

なお、上述のとおり、この日の演奏会では、独唱陣の完成度の低さがベルリン・ドイツ響及びRIAS室内合唱団の献身的な努力を無に帰した箇所があまりにも多かった。彼らの演奏が非常に良かっただけに、独唱陣の低迷が非常に心残りである。

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日曜日の夜は、繁華街といえども、人は少ない。終演後は、そのままホテルに戻り、部屋でビールを飲み、就寝。
翌朝は、午前8時50分発のSN2580便にてブリュッセルへ。この日は、珍しく全てが時間通りに進んだ。正午前に職場に到着し、仕事をこなす。


(公演情報)

Sun 18. December 2011 8 pm
Philharmonie

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
Masaaki Suzuki Conductor

Simona Šaturová Soprano
Véronique Gens Soprano
Annette Markert Contralto
Lothar Odinius Tenor
Dominik Wörner Bass

RIAS Kammerchor
Hans-Christoph Rademann Chorus Master

Johann Sebastian Bach
Orchestral Suite No. 1 in C major BWV 1066
Christen, ätzet diesen Tag

Wolfgang Amadeus Mozart
Mass in C minor K. 427
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[2011/12/20 07:58] | 海外視聴記(ベルリン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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