ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
モネ劇場―マスネ「シンデレラ(サンデリヨン)」
12月22日午後7時すぎ、モネ劇場へ。今シーズンの3つ目の演目は、マスネ「シンデレラ(サンデリヨン)」。

20111222-01

マスネというと、思い浮かぶのは、「マノン」、「ウェルテル」、「タイス」だが、「シンデレラ(サンデリヨン)」に関しては、バレエ音楽やアリアを除くと、録音すらほとんど市販されていない状況。もちろん筆者も初体験。とはいうものの、ストーリーは、おなじみのシンデレラゆえ、馴染みやすい。クリスマス前のこの時期、劇場内には子供連れの姿が多く見受けられた。

20111222-02

なお、前夜からベルギー全土でゼネラルストライキが決行されており、国内の公共交通機関は全て停止。国際列車タリスも運転を取り止め、ユーロスターもブリュッセル線は途中駅リールでの折り返し運転を強いられるという状況。クリスマス前のこの時期にゼネストを決行するとは、なかなかチャレンジングである。しかし、観客はそれぞれ車ないし徒歩で劇場に集う。劇場内はいつもどおり満席であった。さすがである。

20111222-03

筆者の座席は、Balcon 1の下手側1列目。Categorie 1のこの座席は、値段だけのことがあり、視野も音響も申し分ない。モネ劇場の雰囲気を存分に愉しむことができた。上述のとおり、「シンデレラ(サンデリヨン)」は、初体験であったため、細かいことは分からないが、この日の公演は11回目、アラン・アルティノグリュが指揮するAキャストによる最終日ということもあり、大変密度の濃い充実した上演だったと思われる。

20111222-04

モネ劇場を観て思うのは、演出と音楽のバランスがとても良いということ。他の劇場の場合、演出が暴走したり、スター歌手だけが目立ったり、マエストロの存在感が突出したりするなど、凸凹を感じることが多い。これに対して、モネ劇場の場合、よく考え抜かれた演出プランの下、音楽チームと十分に連携をしつつ、長期間にわたり、周到かつ念入りに準備が重ねられてきたことがわかる。しかもそれらは、決して独りよがりではなく、舞台に参加する全てのメンバーの共感に支えられており、観客に対するアピール力を兼ね備えている。この点は、チューリッヒ歌劇場やリヨン国立歌劇場にも当てはまるが、全体を一つにまとめあげる演出の巧さという観点からは、モネ劇場が抜きん出ているといえるだろう。

この日の上演で、まず感心したのは、役者の演技や立ち位置が全て音楽に呼応していたこと。この一体感は、なかなかお目にかかれるものではない。新進気鋭の演出家ロラン・ペリーのチームは、マスネの書いた楽譜の隅々まで研究し尽くしていることがよくわかる。筆者が理想とする方向性だ。

お屋敷における継母と連れ子の立ち振舞いを描く第一幕や、華やかな舞踏会を描く第二幕では、コミカルな演技が多く設定され、それゆえ、キャストも合唱も、身振り手振り、さらには飛んだり跳ねたり走り回ったりと、多くの動きを求められるが、その一つひとつは、台本のみならず音楽にも紐付けられており、舞台と音楽が同時にスッと頭に入ってくる。しかも、歌手が歌い始める時点では、各役者は然るべき立ち位置に到達していて、無理なく歌に専念できるように仕組まれている。シンプルだが、印象的で、飽きのこない舞台装置も秀逸。白ベースの大きな文字柄パネルに、ファッショナブルな赤を差込み、さらに赤を基調とした衣装とコラボさせるという色合いのセンスも良い。純白のドレスに身を包んだサンデリヨンが映える

他方、王子とサンデリヨンが森の中で出会う第三幕では、ストーリーの進展とともに、「動」から「静」へと軸が動き、妖精に守られた二人がロマンティックにデュエットを歌う。森の中で登場する工場の煙突風のセットは、その前のシーンに登場する屋根裏の煙突の煙とリンクしていて、舞台の進行が自然に感じられたのにも、感心させられた。靴合わせの第四幕は、第二幕の延長だが、第三幕との対比から、意外と新鮮に映る。ハッピーエンドまでの流れもスムーズだった。

20111222-05

キャスト陣のバランスも抜群だった。楽譜を想像するに、結構な難役揃いで、これだけ多くの女性キャストをバランスよく配するのは、実務上それなりに難儀なはずだが、サンデリヨン、王子、継母、妖精、二人の連れ子のそれぞれにつき、適材適所なキャスティングがなされていた。歌唱で圧倒する歌手はいないが、どの役者も各々の役回りをキチンと果たしていた。特にサンデリヨン役のアンネ・カトリーヌ・ジレは、いじめられっ子の悲痛さや孤独さ、ドレスに身を包んだ際の凛とした美しさ、そして、王子に対する母性的な愛情に至るまで、歌唱と演技の両面において、見事に表現しきっていた。モネ劇場のような中規模なオペラハウスでは、むしろこういったキャスティングが望ましい。合唱陣も、引き締まった歌唱と演技で、キャスト陣の好演を支えていた。

20111222-06

モネ歌劇場管も、見違えるほどに素晴らしい演奏を披露。フォルテの打ち込みが荒っぽいのは毎度のことだが、活き活きとしたリズム感がマスネの音楽をフレッシュに引き立たせる。他方で、旋律や弱音部は、細部までよく磨かれていて、響きの変遷がとりわけ美しい。全ての瞬間で和声が感じられた。アルティノグリュの手腕に他ならない。アルティノグリュの指揮は、最初は、細かくキューを出しすぎているようにも思われたが、この作品のオーケストラパートは、聴いた印象よりもはるかに複雑かつ緻密に組み立てられているため、油断するとすぐにアンサンブルがばらけてしまう。実際、アルティノグリュが目を離した途端に音楽がわずかに弛緩してしまうという現象が数回現認できた。ともあれ、第一幕冒頭はやや硬かったものの、すぐに音楽が自然に流れるようになり、アルティノグリュとモネ歌劇場管がこの作品を完全に掌握していることが窺われた。第四幕では、オーケストラのノリが良すぎるところもあったが、やる気の裏返しでもあり、好感度は高かった。

20111222-07

カーテンコールは、かなりの盛り上がりであった。オーケストラのメンバーが舞台上に向け満面の笑みとともに熱い拍手を贈っていたのが特に印象的であった。モネ劇場のメンバー全員をここまで本気にさせたこのプロダクションのパワーは、並々ならぬものであったといえよう。

20111222-08

終演後は、メトロもトラムも動いていないので、45分かけて徒歩で帰宅。一日中歩き回ると、さすがに疲労が溜まった。


(公演情報)

Th 22 December 2011, 20:00 (La Monnaie)

Music direction / Alain Altinoglu
Director / Laurent Pelly

Cendrillon / Anne-Catherine Gillet
Le Prince Charmant / Sophie Marilley
Mme de la Haltière / Nora Gubisch
La Fée / Eglise Gutiérrez
Noémie / Ilse Eerens
Dorothée / Angélique Noldus
Pandolfe / Lionel Lhote
Le Doyen / Yves Saelens
Le Surintendant des plasisirs / Quirijn de Lang
Premier Ministre / Donal J. Byrne
Le Roi / Patrick Bolleire
Premier Esprit / Yuhmi Iwamoto
Deuxième Esprit / Charlotte Cromheeke
Troisième Esprit & Une Jeune Fille / Caroline Jestaedt
Quatrième Esprit & Une Jeune Fille / Amalia Avilan
Cinquième Esprit & Une Jeune Fille / Audrey Kessedjian
Sixième Esprit / Camille Merckx
Le Héraut / Pascal Macou

Orchestra / La Monnaie Symphony Orchestra & Chorus
スポンサーサイト
[2011/12/24 05:33] | 海外視聴記(ブリュッセル) | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<アムステルダム行き(11年12月)―ハイティンク指揮ロイヤルコンセルトヘボウ管―Rシュトラウス | ホーム | ベルリン行き(11年12月)②―鈴木指揮ベルリンドイツ響―バッハ&モーツァルト>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/98-6fc8ddf5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。